港区のタワマン、ポストに入っていた「差押予告」
港区にあるタワマンで暮らす丸山社長は玄関先でネクタイを締めていました。
「パパ、もう行くの?」
新品のランドセルを背負った6歳の息子が問いかけます。百貨店で選び抜いたそのランドセルは、丸山社長が「最初くらい、いいものを持たせてやりたい」と奮発したものでした。息子が通う学校は、都内でも有名な私立小学校です。
いつもの癖でふとポストに手を伸ばすと、一通だけ異質な封筒が混じっていました。差出人は税務署。嫌な予感を抱きながら開封すると、そこにあったのは「差押予告通知」の文字。滞納額は数百万円。期限までに納付がなければ売掛金を差し押さえるという、切迫した内容です。
丸山社長は一瞬立ち尽くしましたが、すぐに表情を整え、封筒をスーツの内ポケットに押し込みました。
「うん、いってきます」と完璧な父親として息子に笑いかけました。しかし経営者としての足元は、すでに崩れはじめていたのです。
「子どものため」という言葉に隠されたコンプレックス
丸山社長の会社は、創業12年の内装工事を請け負う会社です。社員は10人ほどと小規模ですが、仕事は安定しており、社長自身の月収は250万円程度。売上も順調に伸びていました。
息子の進学先を考えたきっかけは、妻の何気ない一言でした。
「どうせなら、ちゃんとした教育受けさせたくない?」
周囲の経営者仲間の子どもたちは、私立やインターが当たり前。英語、プログラミング、音楽、スポーツ。いわゆる“教育”に投資している家庭ばかりです。「うちだけ遅れてていいの?」という言葉に、丸山社長は反論できません。
地方の公立育ちで、決して裕福ではなかった丸山社長にとって、自らの努力で成功を掴んだ自負がある一方で、拭いきれないコンプレックスもありました。「子どもには同じ思いさせたくない」そんな願いは裏を返せば過去の自分に対するリベンジのような側面があったのかもしれません。

