「そのうち働くだろう」親の年金で回っていた46歳息子の生活
誠一さん(仮名・79歳)は、妻の静子さん(仮名・76歳)、長男の大輔さん(仮名・46歳)と3人で暮らしています。大輔さんが最後に定職に就いていたのは30代前半の頃です。職場での人間関係を理由に退職して以降、短期の仕事をいくつか試したものの長続きせず、気づけば10年以上、家にいる生活が当たり前になっていました。
「最初の数年は、“少し休めばまた働くだろう”と思っていたんです。でも、年齢が上がるほど本人も外に出にくくなって、私たちも強く言えなくなってしまって」
大輔さんは家事をまったくしないわけではありません。ゴミ出しをしたり、たまに買い物に行ったりはしています。ただ生活の中心は自室で、昼近くに起き、夜更かしをして過ごす日々。近所のコンビニや郊外のショッピングモールへ行くときに欠かせなかったのが、自宅の車でした。
その車は、大輔さんが30代のころに「仕事に行くにも必要だから」と購入したものでした。名義は父・誠一さん。税金や保険、車検代、ガソリン代も、実質的には親が負担してきました。
「本人は“自分の車”という感覚だったと思います。でも、維持していたのは私たちの年金と貯金でした」
誠一さん夫婦の年金は月19万円ほどありますが、3人暮らしの生活費、食費、医療費、光熱費に加え、車の維持費まで抱えるのは重い負担でした。
「食べていくだけなら何とかなるんです。でも、車があると話が違う。保険も税金も、年に一度どんと来ますから」
それでも誠一さんは、長いあいだ車を処分できませんでした。車をなくせば、大輔さんがさらに外に出なくなるのではないか。あるいは激しく反発するのではないか。そんな不安があったからです。
転機になったのは、静子さんの入院でした。軽い肺炎だったものの、数日間の入院が必要になり、誠一さんは病院への付き添いや日用品の準備に追われました。その最中、車検の見積もりが届きます。整備費用を含めると、20万円近い金額になっていました。
「その紙を見たとき、“もう無理だ”と思いました。今のうちに何かを切らないと、家計が持たないと感じたんです」
