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神奈川県内で夫（72歳）と2人暮らしをしている堀部圭子さん（70歳・仮名）。年金は夫婦合わせて月23万円ほど。2駅先には長女・ユリエさん（42歳）が夫と小学1年生の娘（葵ちゃん）と暮らしています。
「何かあると“お母さんお願い”で、うちに来るんです。クリスマスも毎年一緒。孫が本当に可愛いから、ついね……」
そう笑ってみせる圭子さんですが、心には小さな重荷が積み重なっていました。
「こんなに高かった？」クリスマスケーキの値札に固まった日
毎年、近所の洋菓子店で6号サイズのクリスマスケーキを注文するのが恒例。ある日ショーケースの前に立った圭子さんは、思わず足を止めました。
「5,500円……あれ？ 5,000円超えていたっけ？ 確か去年は4,000円台で買えていた気がするけれど」
物価高をひしひしと感じてはいたものの、実際に“毎年買ってきたもの”が目に見えて値上がりしていると、衝撃は大きかったといいます。
実際、帝国データバンクの調査では、2025年冬シーズンのクリスマスケーキ平均価格は4,740円（税抜）と、前年より3.9％の値上げ。イチゴ・乳製品・カカオなど原材料費の高騰や包装資材、人件費の上昇が続き、「値上げせざるを得ない」店が増えている状況です。
また、イチゴは猛暑の影響で価格が前年比10〜30％高、生地の卵も高値圏が続き、ケーキの原価自体が大きく上昇しています。
「ケーキだけじゃないんです。スーパーで買う乳製品も野菜も高くて……年金暮らしには堪えます」
圭子さんの財布の中には、日々の不安が静かに積もっていました。
「ランドセルも私たちが買った」気づけば“支援が当たり前”になっていた
今年の春、葵ちゃんが小学校に入学した際も10万円近いランドセルを堀部夫妻がプレゼントしました。
「うちが勝手にやったわけじゃなくてね、あの子（長女）が“あそこのメーカーのが可愛いの”って。娘夫婦のほうは、旦那さんの実家が四国でお母さんが一人暮らしだから、どうしてもこちらに頼りがちで……」
頼られて嬉しい気持ちもある。しかし“親が負担する前提”が続くと、心はだんだん疲れていきます。
貯蓄は1,500万円あるものの、特に運用などはしておらず「減らないように気をつけて使うだけ」。長い老後を考えると、将来の見通しは決して明るくありません。
「年金は月23万円。イベント続きで支出が増えると、どうしてもね……私たちだって、不安はあるんです」
「ひと回りサイズにしようか？」でも孫の顔を思い浮かべると迷う
11月の末。圭子さんはケーキのサイズを6号から5号に小さくしようと考えました。
「でもね、孫が“今年はなんで小さいの？” って悲しむかなって……」
財布と、孫への愛情。その板挟みで何日も悩んでいたといいます。
そんなある日、夫の良夫さん（72歳）がふと言いました。
「正直に相談してみたらどうだ？ 葵だって、いつまでもじいじばあばと一緒にクリスマスをするわけじゃない。あと数年の大事な時間。だからこそ、お互い気持ちよく過ごすのに越したことない。お互い無理なく続けていくには、話しておくほうがいい」
娘には甘かった夫からそんな言葉が出るなんて意外でした。でも夫の一言で、圭子さんはようやく「話してみよう」と思えたといいます。
