「いまが一番幸せ」…のはずだった
「贅沢しているつもりはありません。ただ、“老後なんだから今しかできないことをしよう”と、旅行や美味しい外食を楽しんでいました」
そう語るのは、東京都在住の佐川雅彦さん(68歳・仮名)と妻の由紀さん(66歳・仮名)夫婦。夫婦の年金月額はあわせて25万円ほど。退職金や定年後の運用で貯めた金融資産は4,000万円を超えています。
住宅ローンも完済済みで、持ち家の固定資産税と生活費を差し引いても、月々の収支はほぼ均衡。毎月の年金で基本生活費をまかないつつ、年2回の国内旅行、孫とのレジャー、月数回の外食が日常でした。
「“理想的な老後”って、こういうものだと思っていたんです。でも……あるときから、ふたりとも心から笑えなくなってきたんです」
きっかけは、昨年体調を崩した友人夫婦の入院でした。介護認定を受けたことで、突然「在宅介護か施設入所か」の判断に迫られた彼らは、精神的にも経済的にも大きなショックを受けていたといいます。
「自分たちは大丈夫だろうと、どこかで思っていたんですね。でも、あっという間に生活が変わるんだと痛感しました。自分たちも、あと数年で“要介護予備軍”になる年齢ですから」
厚生労働省『令和5年度 介護保険事業状況報告』によると、65歳以上の高齢者(介護保険第1号被保険者)のうち、要支援・要介護認定を受けている人の割合は、年度末時点で全国平均19.4%にのぼっています。
また、公益財団法人生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査』によると、介護を行った期間の平均は約4年7ヵ月、介護にかかる月々の費用は約9.0万円という結果が示されています。つまり、いざというときに必要な金額は500万円超に及ぶ可能性もあり、夫婦ともに要介護となれば1,000万円を超えるケースも珍しくありません。
