「退職金を少しでも増やしたい」銀行で勧められた投資信託
「銀行に置いておくよりいいと思ったんです。まさか、半年でこんなに気持ちが落ち着かなくなるとは……」
そう話すのは、65歳の誠一さん(仮名)です。
誠一さんは長年会社員として働き、65歳で退職しました。退職時に受け取った退職金は1,800万円。現役時代からの預貯金も約700万円あり、妻と2人で暮らしています。
夫婦の年金収入は月約23万円。住宅ローンは完済しているものの、固定資産税や住宅の修繕費、今後の医療費などを考えると、老後資金に十分な余裕があるとは感じていませんでした。
「物価も上がっていますし、預金だけではお金の価値が目減りするんじゃないかと心配だったんです」
退職金が振り込まれた数週間後、誠一さんは銀行の窓口で資産運用について相談しました。
そこで紹介されたのが、国内外の株式に投資する投資信託です。担当者からは、長期的な資産形成を目指す商品であることや、価格変動によって損失が出る可能性について説明を受けました。
「値下がりすることもあるとは聞きました。でも、長く持てば増える可能性もあると言われて、それならやってみようと思ったんです」
誠一さんは退職金1,800万円のうち、1,200万円を投資信託の購入に充てました。残る600万円と以前からの預金700万円は、生活費や急な出費に備えて銀行に残しています。
妻からは「最初はもう少し少ない金額にしたら?」と言われたものの、誠一さんは「何度も買うより、まとめて投資したほうがいいだろう」と考えました。
購入後しばらくは、評価額が少しずつ上昇していました。
「最初の2ヵ月で30万円くらい増えたんです。やっぱり預金に置いておくよりよかったと思いました」
ところが、その後は株式市場の変動や為替の影響で、投資信託の評価額が下落し始めます。
購入から半年が過ぎた頃、誠一さんが確認した評価額は約1,100万円。投資した1,200万円から、100万円ほど減っていました。
「100万円ですよ。現役時代なら、何ヵ月も働いて貯める金額です。それが半年で減ってしまったんです」
慌てて銀行の通帳を開くと、退職金が振り込まれた頃より残高が大幅に少なくなっていました。
もちろん、投資信託を購入した1,200万円が銀行口座から引き落とされたためです。通帳の残高がそのまま損失を示しているわけではありません。
それでも誠一さんは、通帳の数字を見て、退職金の大部分を一度に動かしたことを改めて実感したといいます。
