(※写真はイメージです/PIXTA)

金利のある世界に戻り、不動産投資の常識が大きく変化。最新調査では年収1,500万円以上の投資家が、あえて「利回りが低い不動産」に買い換えていることがわかりました。その真意とは?

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「利回り」と「具体策」で鮮明になる分断

こういったリスクに対する考え方の違いは、「求める利回り」や「具体的な投資行動」にも表れています。

 

調査結果で注目したいのは、年収1,500万円以上の人のなかで「求める利回りを下げた」と答えた人が約4割(39.3%〜40.0%)もいたことです。普通なら、金利が上がればそれに見合った高い利回りを求めるはずです。それなのに、彼らはあえて利回りが低くなることを受け入れています。これはどういうことでしょうか。

 

投資対象の変化とあわせて考えると、彼らが「家賃収入をたくさん得ること」よりも「資産価値を守ること」を重視するようになったと考えられます。多少利回りが低くても、資産価値が下がりにくい都心の物件などを選び、インフレから資産を守ろうとしているのです。

 

それに対して、年収500万円未満の人では6割以上が「求める利回りに変化はない」と答えています。資金に余裕がない状況では、利回りが低い物件を買うという選択はできません。その結果、彼らが選んだのは「様子を見る」か「他の人があまりやらない市場に目を向ける」ことでした。

 

「今は買うのをやめて、様子を見ている」と答えた人は23.5%に上ります。また、「新築ではなく中古にする(15.7%)」「一棟マンションではなく戸建てや区分マンションにする(13.7%)」など、価格が高騰しているなかでも比較的手が届きやすい、あるいは高い利回りが期待できる物件を探そうとしています。地方の利回りが高い物件を狙う人が2割前後いるのも、この層の特徴です。

 

具体的な行動においても、違いは明確です。投資戦略の変更について、全体では「借入を減らして、自己資金を増やす(27.7%)」や「家賃を上げる(24.3%)」といった、財務状況の改善や収入増を目指す動きが中心です。これは、金利上昇局面で取るべき一般的な対応といえます。

 

ただ、年収3,000万円以上の人に絞ると、さらに踏み込んだ動きが見られます。「家賃を上げた」割合は45.5%と半数近く、「売却」を行った(または行う予定)割合も32.7%と高くなっています。 さらに注目すべきは、「都心部の資産価値の高い物件(家賃収入より資産価値を重視)に買い換えた」と答えた人が23.6%もいたことです。他の年収層では10%未満にとどまる動きが、富裕層の間では顕著になっています。

 

彼らは、金利が上がって市場が混乱している今をチャンスと捉えています。家賃を上げて収益性が高まった物件を高く売却し、より価値の高い都心の物件に買い換えるという、資産防衛のための行動に出ているのです。 一方で、年収1,000万円未満の人にとって、家賃の値上げや物件の買い換えは簡単ではありません。入居者との交渉や売買にかかる費用を考えると、現状を維持するか、もっと小規模な物件にするか、あるいは地方や築古物件で「工夫と手間」をかけて利益を出すしかありません。

 

今回の調査結果から分かるのは、不動産投資市場において「みんなが同じように勝てる時代」は終わったということです。金利上昇とコスト高騰によって、投資家は厳しい選択を迫られています。 資金力のある人は、利回りが低くても「都心・資産価値」という安全な場所に資産を移す。資金に余裕がない人は、知識や労力を使い「地方・築古・高利回り」という他の人があまり参入しない場所で利益を確保する、あるいは嵐が過ぎるのをじっと待つ。

 

「金利のある世界」に移り変わる今、自身の状況とリスクを見極め、周りに流されずに自分なりの戦略を立てられるかどうかが、今後の資産形成を左右するでしょう。

 

[参考資料]

株式会社LIFULL/不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)『金利上昇・物件価格高騰局面における『不動産投資家の投資戦略に関する意識調査』を健美家が実施』

 

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