(※写真はイメージです/PIXTA)

新築マンションが1億円を超える時代、築20年超の「コンパクトマンション」に注目が集まっています。なかには価格が新築時の2倍以上に高騰した物件も。なぜ古い物件が資産価値を増しているのか。その背景には、立地や供給時期にまつわる意外な理由がありました。

コンパクトマンション、築20年超でも価値が倍増するカラクリ

首都圏の新築マンション平均価格が1億円を突破し、多くの人にとって「夢のまた夢」となりつつある現在、不動産市場で静かな、しかし確かな存在感を放っているのが、専有面積50m2未満の「コンパクトマンション」です。不動産ビッグデータを活用する株式会社マーキュリーの最新調査によって、このコンパクトマンション市場の特異な実態が明らかになりました。驚くべきことに、築20年を超えるような物件であっても、新築分譲時に比べて価格が2倍以上に高騰しているケースが続出しているのです。一体、都心のコンパクトマンション市場で何が起きているのでしょうか。今回の調査結果を紐解きながら、その背景にあるメカニズムと、今後の資産価値の行方を分析します。

 

調査は2024年に流通した中古コンパクトマンションを対象に、新築分譲時の価格と比較して、どの程度の価格上昇があったかを示す「値上がり率」をランキング化したものです。その結果は、一般的な不動産の常識を覆すものでした。ランキングの頂点に立ったのは、東京都中央区に位置する「プラティーク日本橋」(2004年築)で、その値上がり率はプラス176.7%。つまり、新築時から約2.76倍にまで価格が跳ね上がっている計算になります。さらに驚くべきは、上位35物件すべてが値上がり率プラス100%超え、すなわち価格が2倍以上になっているという事実です。

 

このランキングの上位を詳しく見ていくと、いくつかの明確な傾向が浮かび上がります。まず、エリアの集中です。最も多くの物件がランクインしたのは「銀座」や「日本橋」を擁する東京都中央区で12物件。次いで渋谷区が7物件、港区と新宿区がそれぞれ6物件と、トップ層は都心中の都心で占められています。関西・東海エリアも調査対象に含まれていたものの、ランクインは京都府と大阪府の各1物件にとどまり、この現象が首都圏、とりわけ都心部で顕著であることがわかります。

 

そして、もうひとつ注目が「築年数」です。ランキング上位には、2004年築の物件が15物件と突出して多く、2005年、2006年築の物件がそれに続きます。つまり、今から約20年前に建てられた物件が、現在の市場で最も高い価値の伸びを示しているのです。

 

一体、なぜなのでしょうか。

 

その答えは、2000年代前半に起きた「コンパクトマンション供給ブーム」にあります。当時、女性の社会進出が本格化し、経済的に自立した単身者が増加。彼女たちをメインターゲットに、大手デベロッパーがこぞって「職住近接」をコンセプトとした都市型コンパクトマンションを供給し始めました。これらの物件は、現在の状況から鑑みると、非常に値頃感のある価格で分譲されました。その仕入れ値の安さが、今日の不動産価格高騰の波に乗り、高い値上がり率を生み出す最大の要因となっているのです。

 

20年という歳月は、建物の価値を減価させる一方で、それを補って余りあるほどの「土地の価値」と「都心に住むという利便性の価値」を上昇させました。結果として、築20年というハンデをものともしない、驚異的な価格維持、いや、価格上昇を実現しているのが現在の都心コンパクトマンション市場の姿なのです。

 

 

8/23(土)THE GOLD ONLINE フェス2025 SUMMER 連動企画
「THE GOLD ONLINE 川柳コンテスト」作品募集!

※募集期間:6月1日~8月13日

次ページ築浅の優位性が通用しない市場の特殊性

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録