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「自分の家を持ったことがない」社宅暮らしだった元会社員の夢
田島誠一さん(仮名/70歳)は、大手企業に40年勤め上げ、現在は年金生活を送る元サラリーマンです。長年、転勤族として家族とともに全国を回り、住まいは常に社宅。住居費の負担が軽かった分、一馬力で3人の子どもを育てながらも、55歳を迎えるころには金融資産を約3,000万円まで積み上げることができていました。
しかし、田島さんの胸にはずっと消えない思いがありました。「自分の家を持ったことがない」各地を転々としてきた人生。狭い社宅での生活のなかで、「定年後くらいは、広い家でゆったり暮らしたい」そう考えるようになったのです。
55歳で地方都市の本社勤務となったことを機に、田島さんはマイホーム購入を決断します。郊外なら地価も安く、広い土地が手に入ります。退職金は2,000万円ほど見込め、当時は子どもも同居しており、「どうせなら」と土地建物合わせて総額8,000万円、敷地100坪近い“郊外の豪邸”を建てたのでした。
年金生活と80歳完済ローン…想定外が次々に襲う
問題が表面化したのは、65歳でリタイアしてからでした。
田島さんが組んだ住宅ローンは、80歳までの長期返済プラン。返済額は毎月27万円を超えます。「退職金で繰上げ返済すれば楽になる」そう信じていたのです。しかし10年後、退職金2,000万円を全額繰上げ返済に充てたにもかかわらず、残った返済額は毎月14万円。金利負担により、元本は思うように減りません。
田島さんが老後資金として残していた金融資産は約2,000万円。夫婦合わせた年金収入は月24万円ほどです。そこから14万円の住宅ローンを引くと、生活費に回せるのはわずか10万円。「リタイア後は責任の軽いバイトでちょっと働いて……」などと考えていましたが、月々の赤字を補填するには、パートの時間以上の就労がなければ追いつきません。
さらに追い打ちをかけたのが、住まいの維持費でした。外壁の劣化による塗装工事で100万円が飛び、毎年の固定資産税、都市計画税も家計を圧迫し続けます。そして、70歳になるころ、ついに手持ちの預金が底を尽き、税金を滞納し督促状が届く事態にまで陥ってしまったのです。
経済的な苦境に加え、精神的な誤算もありました。最大の想定外は、「子どもは同居し続ける」という前提が崩れたことです。家を建てた当時大学生だった3人の子どもたちは、全員結婚・就職を機に別居を選択。二世帯住宅仕様にしていましたが、予想に反し、広すぎる家に高額なローンと老夫婦だけが残される結果となりました。

