仲介業者に振り回されない!M&Aで失敗しないための「セカンド・オピニオン」の活用法【公認会計士が解説】

仲介業者に振り回されない!M&Aで失敗しないための「セカンド・オピニオン」の活用法【公認会計士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

中小企業の経営者が自社をM&Aで売却する際、M&A仲介業者の助言だけを頼りにすると、価格や条件の設定で不利な状況に陥るリスクがあります。特に、仲介業者が売却価格を下げるよう誘導したり、相手方に有利な条件へ導こうとする場合、経営者自身の判断では不安が残るものです。こうした不安を解消する手段として、M&Aの「セカンド・オピニオン」の活用が有効です。公認会計士・税理士の岸田康雄氏がわかりやすく解説します。

セカンド・オピニオンには2種類ある

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」によれば、M&Aにおけるセカンド・オピニオンは大きく2つに分けられます。

 

狭義のセカンド・オピニオン
支援を依頼するM&A仲介業者と同業の別のM&A仲介業者から意見や助言を得るものです。ただし、同業者同士の場合、業務を奪い合う関係にあるため、評価が偏る可能性があります。

 

広義のセカンド・オピニオン
M&A仲介業者とは異なる、中立・公正な立場の専門家による助言です。公認会計士、弁護士、行政が運営する事業承継引継ぎ支援センターなどが該当します。専門家は守秘義務や独立性が法律で定められており、情報漏洩のリスクが低く、客観的な判断が期待できます。

中立的な意見が得られる理由

公認会計士は「公認会計士法」に基づき、独立性を保持することが義務づけられています。公認会計士法第1条では、会計監査の専門家として独立した立場から財務情報の信頼性を確保し、会社や投資者、債権者を保護することが使命と規定されています。この独立性は、税務や経営コンサルティングの場面にも適用され、M&Aにおける助言の信頼性を支える根拠となります。

契約書における制約と対応

M&A仲介業者と契約する際、業務委託契約書には「他の専門家にM&Aの情報を開示してはいけない」といった条項が含まれることがあります。

 

しかし、公認会計士や弁護士などの士業は職業上の守秘義務を課されており、セカンド・オピニオンを受けても情報漏洩の心配はありません。そのため、契約書の内容を確認し、必要に応じてセカンド・オピニオンを受けられるよう契約条項の修正を依頼することが重要です。

専任条項と期間の設定

M&A仲介業者との契約には、しばしば「専任条項」が設けられます。これは、複数の仲介業者が同時に相手候補先を探すことで情報が拡散し、混乱や情報漏洩リスクが高まることを防ぐためです。専任条項により、提案ルートが一本化され、候補先の信頼も保たれます。

 

しかし、1社に長期間専任させると、他の有力候補先を逃すリスクもあります。この場合は、期間を区切って専任契約を結ぶことが推奨されます。一般的には6ヵ月を基本とし、最長でも1年以内とするのが望ましく、契約者が自由に中途解約できる条項も明記しておくべきです。

まとめ

M&Aは経営者にとって人生で一度きりの重要な判断です。仲介業者の助言だけに依存するのではなく、中立的なセカンド・オピニオンを活用することで、価格や条件の妥当性を客観的に確認できます。契約書の条項や期間を工夫することで、安心してM&Aを進めることが可能です。

 

岸田 康雄

公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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