相場のゆくえを左右する「日本売り」VS「米国売り」
2024年まで円安の“幕引き役”だった為替介入だが…
先週、米ドル/円は148円台で円安が一巡し、146円台まで円高に戻しました。その背景には、日本政府関係者から米ドル売り・円買い介入の可能性が示唆されたことが一因としてあるとみられます。ただし、現時点で米ドル売り介入の可能性はまだ低いでしょう。
2024年、日本の通貨当局は160円前後で断続的に米ドル売り介入を実施しました。水準面では再びその圏内に近づいていますが、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)かい離率でみると状況は異なります。2024年の為替介入時はプラス20%以上だったのに対し、足元では15%程度にとどまっています(図表6参照)。
2022年の介入時もかい離率はプラス20%以上だったことから、2024年までと同じ方針が続く限り、米ドル売り介入が当面行われる可能性は低いとみられます。
もう1つ重要なのは、現在の状況が2022年や2024年の介入局面と異なり、介入が「失敗」に終わるリスクを抱えていることです。過去の介入は米ドルが“買われ過ぎ”の局面で行われましたが、足元ではその懸念がまだ低いとみられます(図表7参照)。
今週の米ドル/円は「154~159円」と予想
2024年までの円安局面では、日本の米ドル売り介入が円安終了の大きな要因となりました。しかし、今回は事情が異なる可能性があります。今回の円売りの主役は、日米金利差を背景とする投機筋ではなく、日本の財政リスクを受けた資本流出だからです。
したがって、円安が止まるかどうかの目安は、日本以上に米国から資本流出が拡大するかどうかにかかっています。具体的には、株価の“バブル”崩壊が米国で本格化するかが焦点となるでしょう。
以上を踏まえると、今週は特に米国株の動向に注目しながら、米ドル/円は「154~159円」と予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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