近年、投資ファンドや経営者自身によるMBOが増えています。その背景には、MBOの特性の活用による投資リターンの最大化、そして経営者による相続対策といった目的があります。どのようなものか、M&Aにくわしい公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
投資ファンドによるMBOとは?仕組みと狙われる会社の特徴
近年、投資ファンドによる上場企業のMBO(マネジメント・バイアウト)が増えています。MBOは企業の経営陣が自社の株式や事業部門を買い取り、経営権を取得する手法です。特に投資ファンドが関わる場合、銀行からの借入金を活用する「レバレッジド・バイアウト(LBO)」と組み合わせて実施されることが多く、上場会社の非上場化と現経営陣の投資参加がセットになるケースが目立ちます。
MBOでリターンを最大化する仕組み
投資ファンドがMBOを活用するのは、投資リターンを最大化するためです。ここでいうリターンとは、企業価値の増加ではなく、投資した元本がどれだけ増えるかを指します。
銀行借入金を活用すれば、少ない自己資金でも大きな投資が可能です。不動産投資で購入代金の大部分を銀行借入でまかなうのと同じ原理です。
たとえば、企業価値100億円の会社を買収し、数年後に180億円で売却するとします。
【借入金を活用しない場合】
自己資金100億円で投資し、180億円で売却すれば、利益は80億円。リターンは80%です。
【借入金を活用する場合】
自己資金50億円、借入金50億円で投資し、180億円で売却すれば、利益は同じ80億円ですが、リターンは160%となります。
少ない元本で投資する方がリターンが高くなる、この仕組みを「レバレッジ効果」といいます。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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