平均年齢が「63.6歳」に達し、70代以上が3割……社長の高齢化が進むなか、経営者は「事業を続けるか、終わらせるか」の判断を迫られています。一方で、事業承継にも廃業にも、“高い壁”が存在するのが現状です。そこで今回は、多くの中小企業が直面している課題と、経営者が備えるべき“出口戦略”についてみていきましょう。公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
廃業したくてもできない…ネックとなる「借入金の返済」
廃業は経済の新陳代謝を促す一方で、現実には複雑で重い手続きが伴います。最大の壁は「借入金の返済」です。
会社の資産が借入金を上回る「資産超過」であれば、資産を売却して清算することができます。しかし、「債務超過」に陥っている場合は、資産を処分しても借金が残ってしまいます。
特に中小企業では経営者が個人保証をしていることが多く、法人の破産がそのまま経営者個人の破産につながるケースも少なくありません。そのため、「廃業したくてもできない」経営者が多いのが実情です。
さらに、“廃業を止める圧力”も存在
経営者の判断を鈍らせる要因として、従業員や金融機関からの“お願い”もあります。長年勤めてきた従業員からは「年金が出るまで働かせてほしい」と頼まれ、取引銀行の支店長からは「リスケ(返済条件の変更)に応じるので廃業しないでほしい」と説得されることもあります。
銀行員自身も営業成績や支店運営の責任を負う立場にあるため、取引先の廃業を防ぎたいという事情があるのです。結果として、経営者が廃業を決断できない“外的要因”が積み重なっていきます。
「専門家」への依頼コストも馬鹿にならない
実際に廃業を進める場合、資産超過なら税理士や司法書士に依頼して解散・清算手続きを行うことができます。しかし、債務超過の場合は弁護士を通じた破産手続きが必要です。弁護士費用や登記費用、さらに従業員への退職金支払い、建物の解体費など、新たな資金が求められることもあります。
なかには、廃業に必要な費用を賄えずに手続きが進められないケースもあり、自治体や中小企業庁が支援策を検討していますが、まだ十分とはいえません。
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
平成28年度経済産業省中小企業庁「事業承継ガイドライン委員会」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施策研究調査会「事業承継支援専門部会」委員、東京都中小企業診断士協会「事業承継支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・ディリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンシパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業承継から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業承継とM&A実務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業承継コンサルティング業務を提供している。
WEBサイト https://kinyu-chukai.com/
著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=142
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