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「預金が少ない」疑念から始まった税務調査
相続税の申告書は、税理士としてできる限り万全を期して提出します。だからこそ、税務調査の通知が来ると「えっ、なにかあったのか?」と驚かされることがあります。今回紹介するのは、まさにそのような案件でした。
被相続人は80歳の男性。会社を定年まで勤め上げたあとは、兼業農家として畑仕事を楽しみながら穏やかに暮らしていました。相続財産が約1億5,000万円と、やや財産は多め。妻は専業主婦(78歳)、子どもは主婦でパート勤務の長女(53歳)と会社員の長男(50歳)、さらに、まだ学生の孫が6人いました。
相続税の申告書を作成した際、筆者は特に問題ないと考えていました。相続財産の中心は土地と建物で、預金は約3,800万円。生前に何度か土地を売却しており、収用を含めて合計7,000万円以上の収入があったものの、それ以外の収入や支出に大きな不自然さは見当たりませんでした。
ところが、税務署の見立ては違いました。「土地を複数回売却している割に預金が少なすぎるのではないか」「専業主婦の奥さんの口座に4,000万円もあるのは不自然だ」こうした指摘から、調査の対象になったのです。つまり「名義預金」の可能性を疑われたわけです。
税務調査というと、多額の財産を隠している人が狙われると思われがちです。しかし実際には、「預金が少なすぎる」ことも調査のきっかけになります。
税務署が行う相続税調査の目的は、申告漏れを発見することにあります。そのなかでも最も注目されるのが「名義預金」です。調査官は一般的に、亡くなる直前10年間の預金取引のうち、50万円を超える出金については、その使途をすべて確認します。
・このお金はなにに使ったのか
・誰が使ったのか
・その資金はどこから来たのか
これらを一つずつ、根気よく突き止めていきます。
税務署にとって「多すぎる預金」も「少なすぎる預金」も、どちらも調査の理由になり得ます。つまり、相続税調査とは「お金の出入りに説明できない部分があるかどうか」を確認する作業なのです。
