日常の記録が相続の備えになる
今回のように「明確な証拠がないけれど、実態としては問題ない」というケースでは、最終的な判断は調査官の裁量に委ねられる部分もあります。だからこそ、私たち税理士は可能な限りの資料を準備し、経緯を丁寧に説明できるよう努める必要があるのです。
税務調査は、隠している人を探すのではなく、「説明できない人」をみつけるプロセス。「なにもやましいことがない人」であっても、備えがなければ厄介なものになりかねません。逆にいえば、日ごろから通帳の管理や資金の記録、前述のメモなどを丁寧にしていれば、調査官との対話もスムーズに進み、無用な疑念を招かずに済むでしょう。
相続は財産の引き継ぎだけではなく、「信頼」のバトンをつなぐ作業でもあります。だからこそ、みえないお金の動きにも目を配り、「みえる化」しておくことが大切です。
身内同士のやりとりこそ、記録と説明が必要です。特に「口約束」や「暗黙の了解」は税務署には通用しません。将来の家族の安心のために、いまできる備えを――それが私たち税理士の役割であり、皆さんにもお伝えしたい教訓です。
中垣 健
中垣健税理士事務所所長
おかざき相続税・贈与税相談プラザ代表
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