ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
相続税の申告は完璧のはずが…税務署からの思わぬ指摘
相続財産は、約1億3,000万円。亡くなった父親(70歳)は中小企業の経営者だったため、その割には相続財産の額が比較的少ないという印象でした。相続人は専業主婦の妻(66歳)と息子1人(39歳)、娘2人(37歳、35歳)。遺族はもちろん、税理士である筆者も、特に問題のない申告だと考えていました。
申告の際には、税理士が申告内容の適正さを保証する「書面添付制度」を利用しました。この制度を利用すると、税務署は税務調査の前に、まず担当税理士に意見を聴取します。筆者はしっかりと調査したうえで申告していたため、自信をもって税務署に出向きました。ところが、担当調査官は「これ、申告から漏れているものがありますよね」と切り出してきたのです。
やりとりは核心を避けるかのように続き、「資料収集はどう行ったのか」「相続人といつ会ったか」など細かな質問が延々と続きました。らちが明かないので筆者はしびれを切らし、「なにが問題なのか早くいってください、私も協力しますから」と問い詰めたところ、調査官から出てきたのは「相続人に海外資産があるのでは?」という疑念だったのです。
調査官は「実は、相続人が所有する海外資産があると我々は思っている。先生、知らないでしょ?」といいます。そのような話は遺族から聞いていなかったので、筆者は「いや、知りません」と答えるほかありませんでした。これが今回の税務調査の始まりです。
意見聴取という制度は、申告書を作成した税理士が、なにをみてどのように調べたかを聴取するものです。税務署と税理士の信頼関係のもと、税理士がなにを根拠に申告書を作成したかが問われます。そこで税務署が納得すれば調査は終了しますが、今回のように税理士も知らない事実が出てきた場合、本格的な調査へと移行します。
税務署側の話によると、4人には海外の口座に合計3,500万円ほどの資産があることが判明したとのこと。それが亡くなった方(父親)の名義預金ではないかと疑っていたのです。そのため、「ほかの部分はいいので、この件だけ調査しましょう」ということになりました。
