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国策ファンドの戦略的役割…デジタルインフラ整備を後押し
そして、この国家的なデジタルインフラの整備と競争促進を、国策として支える重要な役割を担うのが、フィリピン初のソブリンウェルスファンド(SWF)である「Maharlika Investment Fund(MIF)」です。MIFは、単なる資金調達の手段ではなく、「国益」に資する戦略的投資を行うことを使命として設立されています。
MIFは、エネルギーやデジタルインフラを「国の経済変革の基盤」と位置づけ、積極的な投資対象としています。その最初の重要な動きの一つが、送電システムを実質的に管理するNational Grid Corporation of the Philippines(NGCP)の親会社であるSynergy Grid and Development Philippines Inc.(SGP)への戦略的な出資です。この出資により、MIFはNGCPの取締役会の議席を確保し、国の電力網という基幹インフラに対し、国策としての影響力を行使する体制を整えています。
通信分野においても、MIFは重要な役割を担う計画です。MIFは、デジタルインフラを、エネルギー安全保障、食料安全保障、重要鉱物採掘と並ぶ主要な投資領域として掲げています。特に市場原理だけでは投資が進みにくい地方のデジタル格差解消に焦点を当てています。
具体的には、外国のパートナーとの間で、主に農村地域を対象とした通信タワーの建設・運営を目的としたジョイントベンチャー(JV)の設立などが想定されます。こうした動きは、MIFが「Konektadong Pinoy Act」の目指す「デジタル・インクルージョン」を、資金面から具体的に実現するための、強力な触媒となる可能性を示しています。
また、本法はTransCo(国家送電公社)などが保有する国有ファイバー資産へのアクセスを促進する内容も含まれており、これを「ミドルマイル」として活用し、民間企業が「ラストマイル」を担うというPPP(官民連携)の可能性が高まっています。
この官民一体となった取り組みに、MIFの資金が戦略的に投入されることで、フィリピン政府の「すべての国民に高速で信頼性の高いインターネットを提供する」という目標の達成は、現実味を帯びてくるでしょう。
「Konektadong Pinoy Act」のIRR公開と、Maharlikaファンドによる戦略的な基幹インフラ投資は、フィリピン通信市場の構造を根底から変える「地殻変動」となるポテンシャルを秘めています。
外資導入、競争促進、インフラ共有、そして国策による戦略投資という四つの力が相互に作用することで、フィリピンのデジタル接続性は飛躍的に向上し、サービスの低価格化と高品質化が同時に実現されることが期待されます。これにより、フィリピンは経済成長の新たな段階へと踏み出し、真の「デジタル大国」への道を歩み始めるものと期待が高まります。
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