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フィリピン「デジタル」と「インフラ」の二大IPO
現在、フィリピンの金融市場では、長期的な経済構造の変化を示す二つの対照的な新規株式公開(IPO)が注目を集めています。一つは、フィリピンのデジタル経済を牽引するフィンテックの巨人、GCashを運営するGlobe Fintech Innovations, Inc.(Mynt)のIPOに向けた大きな前進。もうひとつは、生活インフラの中核を担うMaynilad Water Services, Inc.の具体的な上場プロセス開始です。これらの動きは、不動産投資家や株式投資家にとって、今後のフィリピン市場の方向性を読み解き、投資戦略を練るうえで重要な示唆を与えています。
まず、MyntによるGCashのIPO準備について詳細を見ていきましょう。GCashは現在、フィリピン国内だけでなく、米国、英国、日本などを含む16ヵ国で実に9,400万人もの登録ユーザーを抱え、まさに東南アジアを代表するスーパーアプリへと成長しました。今回、フィリピン証券取引委員会(SEC)から承認を得た株式分割は、同社が長年計画してきたIPOを現実のものとするための決定的な一歩と見られています。株式分割は、授権資本金を維持しつつ、普通株の数を大幅に増やし、結果として一株あたりの価格を下げます。これは、上場を控える企業が市場の流動性を高め、より多くの投資家に株を購入しやすくするために採用する一般的な手法です。
特にGCashの場合、その巨大なユーザーベースを持つ一般投資家層に株を広く行き渡らせるという明確な意図がうかがえます。一株あたりの価格が手ごろになることで、個人投資家が容易に市場に参加できるようになり、IPO成功の基盤が強固になります。Globe Telecom、Ayalaというフィリピンの巨大コングロマリットに加え、デジタル決済の巨頭であるアント・インターナショナルが戦略的パートナーとして参画しているMyntのIPOは、「東南アジアで最も重要なフィンテック上場のひとつとなる可能性を秘めています。
市場環境が安定していれば、2026年初頭にもIPOが実施される公算が高いと見られており、これはフィリピンの「デジタル経済」の成熟と、国際的な資本市場への本格的な統合を象徴する出来事となるでしょう。また、システム起因のデータ漏洩疑惑について当局が懸念を否定したことは、投資家が重視するであろう企業の信頼性とインフラの安全性を裏付ける材料です。
