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「自分の時代」がくることを信じて声を上げ続ける
詳細は忘れたが浜松市内にある酸素ボンベ取扱店に自分で足を運び、酸素ボンベを調達した。このことは上司にも教授にも言っていない。彼女には「私が年末年始ずっと病院で待機しているから、何かあったら電話してくれ」と電話番号を教え、大晦日の夕方に酸素ボンベの酸素を吸入させながら家に帰した。このことは、その日に当直勤務していた看護師数人しか知らない。
夜は万一の電話に備えて彼女の自宅近くに車を止め、車中で夜を明かした。翌朝になっても電話が鳴らなかったため「ああ、彼女は無事だったんだな」と胸をなで下ろした。
彼女はというと、夫と一緒に紅白歌合戦を楽しんだのちに、元日に病院に戻ってきた。彼女本人はもちろんのこと、彼女の夫も「こんなことができるとは思わなかった」と一時帰宅をたいへん喜んでくれた。
ところが、正月明けにそのことが教授や上司にもばれたようだ。年初の教授回診のときに「この患者を帰したらしいな」と教授に言われた。筆者は生意気にも「この患者は酸素さえ吸入していれば容態は安定していましたし、筆者が万一に備えて彼女の自宅近くで待機していたので大丈夫だったんです。彼女は一晩旦那さんと家で過ごして、紅白歌合戦を楽しんで翌日病院に戻ったのを見届けたので問題はありませんでした」と反論した。
「問題なかったと言うけれど、管理上の問題があるだろう。そういうことは私に相談するものだよ。年末になんとしても患者を自宅に帰したいから知恵を出してくれませんか? と言ってくれれば知恵を出せるのに、君は私が判断すべきことを勝手にやってしまったんだ」とたしなめられた。
当時、筆者があの教授の立場であれば部下を叱りつけていたと思う。「この患者のためにどうすればいいだろう」と考えた結果があの酸素ボンベだったのだが、今から思えば上司や先輩に無断で実行してしまったのがいけなかった。現代であればコンプライアンスにも関わる大問題となり、筆者も大目玉を食らうと思うが、あのときの教授は怒るどころか「次からは気をつけてくれよ」とやんわり言うだけで話は終わった。きっと「小林は患者の気持ちを慮って正しいことをした」と思ってくれたからだろう。だからあの教授には感謝しかない。
医療とは患者さんにとって何が大切かをいつも考えているかどうかである。正しいかどうかはその患者さんにとっての判断であるはずだ。例外のない規則はないという。
筆者が酸素ボンベの酸素を彼女に吸入させながら帰宅させた、あの行為が今では在宅酸素療法となり、保険診療にもなっている。要は医療の本質を考えて知恵を出すということだ。目の前の患者を救いたい一心だ。「パッション・ミッション・ラブ」である。正しいことならやがて診療体系に組み込まれるはずだ。
医師とは「なんとしても患者を救わなければならない」という使命感を持っているものだ。そうした使命感を初期研修医のうちに持てるようになったのは、SLE患者やこうした末期乳がん患者に出会えたからにほかならない。初期研修医時代のこれらの鮮烈な体験から、筆者が今口癖のようにいつも唱えている「パッション・ミッション・ラブ」という言葉が自然と生まれてきたのだと思う。
だから若い皆さんも、自分が正しい、「どう考えてもこの治療法のほうがFor the patientになる」と思ったことは、どんどん倫理委員会にかけて先輩や上司に提案すべきである。今すぐは提案が通らなくても、自分の時代がやって来ることを信じて提案をし続けてほしい。時間がかかるかもしれないが、自分の提案したことがやがて保険点数が付くようになり、広く世の中に認知されるような治療法になる可能性があるのだ。
小林 修三
医師
日本腎臓財団 理事
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