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リベラルアーツを学ぶ理由とは?
リベラルアーツには文学や芸術、社会学、法律、経済学、哲学なども含まれる。物理や数学といった理系科目も医師にとっては大事だが、それだけでは即物的なものの見方しかできない。物事を深く洞察できるようになるためには、そうした文系科目も学ぶべきである。特に小説を読むことを勧めたい。文学を読み、その行間の中に人の心をとらえる力を身につけてほしいのだ。
例えば夏目漱石を思い出してほしい。あの時代に彼は『草枕』という作品の中で「智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」と書いたが、この一節を読めば当時の文豪も現代の人たちと同じ悩みを抱えていたのだと理解でき、周りに共感してくれる人もいると思う。筆者は、医事新報という歴史ある雑誌に「医師の表現力」という題で原稿を書いている。
そこに加え、生活を豊かにし、人としての幅を広げてくれるような芸術分野の経験もあるとベターである。学生時代に絵を描いたり楽器を弾いたりする部活動に入っていたり、そうしたことを趣味にしているとよい。
また、若い頃からさまざまな経験をしておくことも大切だ。医師になるような人々は子どもの頃から塾に通い、机にかじりついて熱心に勉強してきた人も多いと思うが、医師になるにはそれだけでは足りない。
以前、ある私立中学校に通う女子中学生が50人ほど、筆者の病院に見学に来てくれたことがある。「命とは何か」という話をしたあと、手術室や人工透析、腎移植の現場など、スタッフの案内で病院内をあちこち見て回ってもらったのだが、最後のあいさつのときに彼女たちにこう話をした。
「みんな、今日はいろんな医療の現場を見てくれたでしょう? 今までこんな現場は見たことがなかっただろうから、よい機会になったと思う。お医者さんは究極的には人を診る仕事だから、お医者さんになるためにはいろんな経験が必要なんだ。勉強も大事だけど、スポーツや音楽、絵画などをクラブ活動や課外活動を通して学んだり、お父さんやお母さん、友達と遊んだり、いろいろと幅広く経験を積んでいけば、立派なお医者さんになれると思うよ。だから、それを忘れないようにしてください」と。
10代という多感な時期から、命とは何か、医師になるということはどういうことかということを考えながら、さまざまな経験をしておくことが、医療者としての人格の幅広さを生むのである。
