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研究のハードルが高くなった日本
研究といえば、近年は研究に対する規制が非常に厳しくなっている。これは大切ではあるが残念なことだとも思っている。研究を行う場合は、当然ながら研究のプロトコールを作成して、事前に倫理委員会に諮って承認を得て行うが、以前はOKとされていたものが今はNGとされているのである。
病院では診療を行う前に、「この病院で治療を受けた場合、それが論文化されることに同意するものとする。異議がある場合はその意思表示をする」との旨を書面にして署名してもらう。「自分のことは将来にわたって研究対象にしないでほしいという場合は、私たちに教えてください」とのメッセージを伝えておくのである。
これを怠ると、厚生労働省の定める「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に対する重大な不適合となる。重大な不適合となるケースはさまざまだが、倫理委員会の審査または研究機関の長の許可を受けていない場合、インフォームドコンセントの手続きを経ていない場合などは、研究内容にかかわらず重大な不適合があったとされる。
その場合、厚生労働大臣へ報告しなければならないうえに、重大な不適合があった旨を研究機関がWebサイト等に掲載する、または記者会見を行うなどの形で公表しなければならないのである。
こうした規制は、医師が好き勝手な医療行為や研究を行うのを抑制するために一定程度は必要だとは思う。しかし、過去の症例報告など臨床研究に対する規制を過度に厳しくすると、かえって医学の進歩を大きく阻害することになるのではないかと懸念している。症例からの臨床研究では先に述べたように、ある程度自由度がないと書きにくい。
しかも最近の倫理審査は重箱の隅をつつくような瑣末(さまつ)な問題を指摘することが増えているので、若者がどんどんこうしたレポートを書かなくなっている。わが国の論文数が減った理由の一つに、こうした過剰な審査が障壁になっているのではないかと危惧する。一例から学ぶようにとよく指導してきたのに、倫理が厳しすぎると医学の発展は難しい。
