アメリカの富裕層は、クリスマスに「現金」を贈る…夫婦なら「年間約600万円」が非課税に。規模も自由度も“ケタ違い”な、米国流「相続対策」【国際税理士が解説】

アメリカの富裕層は、クリスマスに「現金」を贈る…夫婦なら「年間約600万円」が非課税に。規模も自由度も“ケタ違い”な、米国流「相続対策」【国際税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

日本では「年間110万円まで」の贈与が非課税ですが、アメリカではその枠がケタ違い。一生涯のうちに非課税で移転できる財産は、相続と贈与をあわせて数十億円にのぼります。年末の足音が聞こえてくる季節になってきましたが、アメリカの富裕層はクリスマスギフトに現金を忍ばせる“贈与の儀式”を通じて、着実な相続税対策を行っているようです――。本記事では、アメリカの贈与税制度の特徴と、富裕層が実践する非課税枠の活用術についてみていきましょう。

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年末にアメリカの富裕層が行う“恒例行事”

年末が近づくと、アメリカの富裕層のあいだではある“儀式”が行われます。小切手やクリスマスギフトに現金を忍ばせたり、子どもの教育資金プラン(529プラン)や信託(トラスト)に送金したりするのです。これは単なる贈与ではなく、年間非課税枠を活用した着実な「相続税対策」の一環です。

※ 529プラン(529 Plan)……アメリカの教育資金専用の貯蓄制度で、大学などの学費を目的に積み立てると運用益が非課税になる。贈与税の非課税枠を活用して資金を移すことで、相続税対策にも利用される。米国歳入法第529条に基づくことからこう呼ばれる。

 

2025年時点では、年間の贈与税非課税枠(annual gift tax exclusion)は1人あたり約1万9,000ドル。夫婦であれば子ども1人に年間約3万8,000ドルまで非課税で贈与できます。ドル円換算でおよそ500万円相当です。

 

この枠を毎年活用することで、親から子へ、祖父母から孫へと、富裕層は計画的に財産を移転しているのです。

一生のうちに非課税で渡せる相続税+贈与税は「21億円」

アメリカの贈与税制度において、課税の対象となるのは「贈与者」です。受け取る側(受贈者)には納税義務がなく、贈与者が年間非課税枠の範囲内で贈与すれば、贈与税は発生しません。

 

また、贈与と相続を通じた累積的な非課税枠(unified gift & estate tax exemption)は、2025年時点で約1,399万ドル(約21億円強)に達しています。そのため、一般的な富裕層であれば相続税や贈与税を心配する必要はほとんどありません。

 

高額な財産を一度に相続させると、評価額の変動や税制改正によるリスクが伴います。そこで、毎年少しずつ贈与しておくことで、将来的な資産の増加分も受贈者の手に渡り、結果的に相続財産を圧縮できるため、相続税負担を軽減させることが可能です。これは昔から、地味ながら強力な戦略として知られています。

 

なお、TCJA(Tax Cuts and Jobs Act)によって引き上げられた高額な非課税枠は、2026年以降に元の水準に戻る可能性があるとされています。そのため、制度が有利なうちに毎年の枠をフル活用することが、リスク回避につながります。

 

また、こうした贈与には、「家族支援」という側面もあります。贈与された資金は、子どもや孫の教育費、生活費、医療費などに充てられることが多く、相続税対策と家族へのサポートを同時に実現できる“一石二鳥”の手段となっています。

 

日本にも、親から子・孫への贈与において年間110万円まで非課税となる制度があります。しかし、アメリカの制度は非課税枠の大きさや柔軟性、そして夫婦での枠の活用など、規模も自由度もケタ違いです。

 

富裕層にとって、年末の贈与は最も簡単で確実な相続税対策の方法であり、家族の絆を深める“恒例行事”として定着しています。

 

なお、年間非課税枠を超える贈与には贈与税申告(Form 709)が必要であるほか、贈与の形式によっては非課税枠が適用されないケースもあります。さらに、制度は将来的に変更されるリスクもあるため、富裕層は税務・法務の専門家と連携しながら計画的に実行しています。

 

アメリカの富裕層が行うこの“地味だが確実”な戦略は、相続税対策であると同時に、日々をともに過ごす家族のサポートでもあります。年末になると、静かに、しかし着実に、財産と愛情を次世代に受け渡す──これが、アメリカ富裕層に根付いた“贈与の儀式”の本質です。

 

 

奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表

 

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