ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)
『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
年末にアメリカの富裕層が行う“恒例行事”
年末が近づくと、アメリカの富裕層のあいだではある“儀式”が行われます。小切手やクリスマスギフトに現金を忍ばせたり、子どもの教育資金プラン(529プラン※)や信託(トラスト)に送金したりするのです。これは単なる贈与ではなく、年間非課税枠を活用した着実な「相続税対策」の一環です。
※ 529プラン(529 Plan)……アメリカの教育資金専用の貯蓄制度で、大学などの学費を目的に積み立てると運用益が非課税になる。贈与税の非課税枠を活用して資金を移すことで、相続税対策にも利用される。米国歳入法第529条に基づくことからこう呼ばれる。
2025年時点では、年間の贈与税非課税枠(annual gift tax exclusion)は1人あたり約1万9,000ドル。夫婦であれば子ども1人に年間約3万8,000ドルまで非課税で贈与できます。ドル円換算でおよそ500万円相当です。
この枠を毎年活用することで、親から子へ、祖父母から孫へと、富裕層は計画的に財産を移転しているのです。
一生のうちに非課税で渡せる相続税+贈与税は「21億円」
アメリカの贈与税制度において、課税の対象となるのは「贈与者」です。受け取る側(受贈者)には納税義務がなく、贈与者が年間非課税枠の範囲内で贈与すれば、贈与税は発生しません。
また、贈与と相続を通じた累積的な非課税枠(unified gift & estate tax exemption)は、2025年時点で約1,399万ドル(約21億円強)に達しています。そのため、一般的な富裕層であれば相続税や贈与税を心配する必要はほとんどありません。
高額な財産を一度に相続させると、評価額の変動や税制改正によるリスクが伴います。そこで、毎年少しずつ贈与しておくことで、将来的な資産の増加分も受贈者の手に渡り、結果的に相続財産を圧縮できるため、相続税負担を軽減させることが可能です。これは昔から、地味ながら強力な戦略として知られています。
なお、TCJA(Tax Cuts and Jobs Act)によって引き上げられた高額な非課税枠は、2026年以降に元の水準に戻る可能性があるとされています。そのため、制度が有利なうちに毎年の枠をフル活用することが、リスク回避につながります。
また、こうした贈与には、「家族支援」という側面もあります。贈与された資金は、子どもや孫の教育費、生活費、医療費などに充てられることが多く、相続税対策と家族へのサポートを同時に実現できる“一石二鳥”の手段となっています。
日本にも、親から子・孫への贈与において年間110万円まで非課税となる制度があります。しかし、アメリカの制度は非課税枠の大きさや柔軟性、そして夫婦での枠の活用など、規模も自由度もケタ違いです。
富裕層にとって、年末の贈与は最も簡単で確実な相続税対策の方法であり、家族の絆を深める“恒例行事”として定着しています。
なお、年間非課税枠を超える贈与には贈与税申告(Form 709)が必要であるほか、贈与の形式によっては非課税枠が適用されないケースもあります。さらに、制度は将来的に変更されるリスクもあるため、富裕層は税務・法務の専門家と連携しながら計画的に実行しています。
アメリカの富裕層が行うこの“地味だが確実”な戦略は、相続税対策であると同時に、日々をともに過ごす家族のサポートでもあります。年末になると、静かに、しかし着実に、財産と愛情を次世代に受け渡す──これが、アメリカ富裕層に根付いた“贈与の儀式”の本質です。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
