(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の人が相続人あるいは被相続人になる場合、法で定められた手続きやシステムに則るケースが必然的に多くなります。認知症によって判断能力が低下した人が相続に関わると、相続のハードルは確実に上がるだけでなく、“争続”などのトラブルに発展する恐れもあるのです。本記事では、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より、相続手続きに認知症の人が含まれる場合、実際に注意すべきポイントを紹介します。

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遺言よりも優先される遺留分って何?

相続人の最低限の相続分を保証する「遺留分」

民法で決められている法定相続分に対し、被相続人が財産の配分割合を自由に決められる「指定相続分」があります。自由な分、遺言書の内容次第で特定の相続人だけが有利になったり、逆に不利になったりする可能性があります。そのため相続人が最低限得られる相続分を保証する「遺留分」があります。
 

[マンガ]認知症の時期に書いた父の遺言


たとえば上記のマンガのケースでは、疑わしい遺言によって相続人である長女と二女が遺留分を侵害されています。このようなとき、遺留分を侵害している相続人(マンガの場合は長男)に侵害額を金銭で請求することができます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。

遺留分の権利があるのは、配偶者、第一順位(子・孫)、第二順位(父母)までで、第三順位の兄弟姉妹にはありません。

遺留分については、特に認知症の相続人がいる相続に限った問題はありませんが、たとえば父親が遺言で、「妻には十分な財産があるので、私の財産は長男と長女に相続させる」と書き、その通り分割するとします。その後、認知症である母親に後見人がついた場合には、「遺留分侵害額請求」を起こされる場合があります。後見人の任務は、被後見人の財産を守ることだからです。

「遺留分侵害額請求」ができるのは相続開始の日および遺留分の侵害を知った日から1年(遺留分侵害を知らない場合は10年)です。
 

[図表4]遺留分の相続分



奥田 周年
行政書士
OAG税理士法人 社員税理士

 

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※本連載は、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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