相続に認知症の人が関わる場合、遺産分割などにおける本人の意思確認が明確ではない点に懸念があります。そのため、事前に遺言で遺志を示すのが従来までのセオリーでしたが、その方法も2019年7月の民法改正により、絶対的ではなくなりました。遺言に代わる認知症の相続対策として、おすすめしたいのが「家族信託」です。家族ら信頼できる人に財産やその管理を託す「家族信託」にはどんなメリットがあるのでしょうか。本記事では、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より、認知症の人がいる場合の相続について、家族信託を中心に解説します。
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認知症1000万人時代の相続対策「家族信託」とは
信託という手法は、信託業法の免許を持っている信託銀行や信託会社しか使えませんでした。しかし、平成19年に施行された信託法によって、一般の方も使えるようになりました。
信託には、商事信託と民事信託があり、商事信託は信託銀行や信託会社が営利を目的として依頼者の財産を(受託者として)預かることをいい、民事信託は営利を目的としない一般の方が依頼者の財産を預かることをいいます。
この民事信託を、一般的には「家族信託」といいます。信託銀行の中で「家族信託」という名称の商品を取り扱っているところがありますが、こちらは商事信託に該当しますので、これから説明する民事信託としての家族信託とはちがうものです。
関係図で整理する「家族信託」のしくみ
家族信託とは、ご自身の財産を信頼できる方に管理・運用・処分をお願いするとともに、ご本人からご家族などにご自身の財産を渡すツールをいい、財産を「信託」という紙に包んで、ご家族に渡すようなイメージです。
家族信託での最低限必要な登場人物は、財産を持っているご本人、財産を預かり管理・運用・処分をする方、財産からの運用益や処分代金を受け取る方の3名です。
財産を持っているご本人を委託者、財産を預かる方を受託者、財産からの運用益や処分代金を受け取る方を受益者といいます。そして、ご本人が受託者に預ける財産を、信託財産といい、財産の名義は、預かる方の名義に変更します。
OAG税理士法人 社員税理士
行政書士
1965年生まれ。茨城県出身。1988年、東京都立大学経済学部卒業。1994年、OAG税理士法人(旧・太田細川会計事務所)入所。1996年、税理士登録。2018年、行政書士登録。
現在、OAG税理士法人チーム相続のリーダーとして、相続を中心とした税務アドバイスを行うとともに、相続・贈与等の無料情報配信サイト「アセットキャンパスOAG」を運営。また、同グループの株式会社OAGコンサルティングにて事業承継のサポートを行う。
【主な著書】
『身近な人の遺産相続と手続き・届け出がきちんとわかる本』(監修)、『身内が亡くなった時の手続きハンドブック』(監修)、『葬儀・相続手続き事典』(以上、日本文芸社)
『Q&A相続実務全書』『Q&A株式評価の実務全書』(以上、ぎょうせい)
『法人税の最新実務Q&Aシリーズ借地権』(中央経済社)
『資産5000万円以下の相続相談Q&A』(監修)、『図解と事例でよくわかる 都市型農家の生産緑地対応と相続対策』(以上、ビジネス教育出版社)
【運営サイト】
相続・贈与から資産に関する疑問までわかりやすくお伝えする無料の専門サイト
『アセットキャンパスOAG』:https://www.oag-tax.co.jp/asset-campus-oag/
著者プロフィール詳細
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連載認知症1000万人時代突入…「親が認知症」できる・できない相続