(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の人が相続人あるいは被相続人になる場合、法で定められた手続きやシステムに則るケースが必然的に多くなります。認知症によって判断能力が低下した人が相続に関わると、相続のハードルは確実に上がるだけでなく、“争続”などのトラブルに発展する恐れもあるのです。本記事では、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より、相続手続きに認知症の人が含まれる場合、実際に注意すべきポイントを紹介します。

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認知症の相続人がいると、ぐ~んと上がる相続のハードル

相続が発生すると、まず遺言書のある・なしを確認し、あれば遺言書に従って相続財産の配分を行います。しかし、遺言書のない場合、相続人の中に認知症の人がいると、その配分は簡単ではありません。ここでは相続の大まかな流れをお見せしましょう。

 

人が亡くなると始まる遺産相続

相続は亡くなった人の財産を家族や関係者が引き継ぐことです。財産を持っている人を「被相続人」、財産を受け取る人を「相続人」と呼び、被相続人が亡くなった瞬間から相続が始まります。

家族や近しい人が亡くなると通夜や葬儀、初七日法要など慌ただしい日々が続きますが、並行して誰が相続人になるかの確認を進めます。相続人は民法で法定相続人として定められていますが、正式に確定するために戸籍をさかのぼって確認していく必要があります。

また故人が財産をどうしたいか書き記した遺言書が残されているか確認します。自筆の遺言であれば、家庭裁判所で検認を受けて財産分配します。また公正証書遺言があれば、これに従い配分します。

遺言書がなければ相続人全員で話し合って遺産分割協議を行い、最終的に合意した内容で遺産分割協議書を作成し、遺産分割を行います。
 

認知症の相続人がいると相続のハードルは確実に上がる

認知症の相続人がいると、遺産相続では、往々にしてトラブルが発生しやすくなります。分割は相続人全員が納得し、署名押印しなければなりません。話し合いで解決しない場合は家庭裁判所で調停の手続きをすることになります。

このとき相続人の中に認知症を患う人がいた場合、物事の正しい判断が難しい状態にあるため、遺産分割協議で自分の権利を行使することができないと考えられます。このようなときは、成年後見人を選任して分割協議を進めることになります。

認知症の相続人を除外したり、無視して協議を行ったりした場合には、協議は無効となり、相続手続きのやり直しが必要になります。
 

財産を受け継ぐ相続人には優先順位がある

被相続人の財産を受け継ぐ相続人は、「法定相続人」といって民法で定められています。ただし被相続人が遺言で、相続する人を指定している場合は、その内容が優先されます。

法定相続人には、「配偶者相続人(被相続人の配偶者)」と「血族相続人(被相続人の子や孫、父母、兄弟姉妹)」があり、配偶者は常に相続人になりますが、法律上婚姻関係にない場合は相続人にはなれません。

血族相続人は第一順位から第三順位まであり、遺産を受け継げる順位が設けられています。第一順位は被相続人の子ども・孫である直系卑属、第二順位は両親や祖父母という直系尊属、第三順位は兄弟姉妹となっています。順位が上の相続人がいる場合は、下の順位の人は相続人にはなれません。

たとえば被相続人に子どもがいる場合、相続人は「配偶者+第一順位の子」となり、子がいない場合は、「配偶者+第二順位の父母」。父母もいない場合は、「配偶者+兄弟姉妹」が相続人になります。なお、孫が相続人となるときは、子が以前死亡などの場合をいい、代襲相続といいます。

 

[図表1]法定相続人とその順位

 

相続人確定のためには戸籍をさかのぼって確認

相続人の確定には、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて取り寄せて確認する必要があります。たとえば被相続人が亡くなったときは、妻と子と暮らしていても、前の結婚のときにもうけた子がいたり、認知した子がいたりする可能性があるからです。

被相続人の本籍地の市区町村役場で死亡記載のある最後の戸籍謄本を取得します。そこからひとつ前の戸籍を読み取り、同様の手続きでまた戸籍を取り寄せます。これを繰り返し、故人の出生の記載がある戸籍まで確認し、相続人を確定します。

なお、戸籍謄本や除籍謄本は、広域交付制度を利用すると、最寄りの市区町村の戸籍係でまとめて入手することができます。

戸籍謄本等の請求者は、被相続人の配偶者、父母、祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られ、市区町村の戸籍係で直接請求する必要があり、郵送や代理人では請求できません。

 

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※本連載は、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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