(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代とも呼ばれる現代。日本人の平均寿命が延びていることは非常に素晴らしいことですが、判断能力が低下する「認知症」を患う人も増えているのが実情です。認知症の人が1000万人を超えるともいわれる時代に、相続においてはどのような知見と対策が必要なのでしょうか。本記事では、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より、認知症の人が周囲にいる場合に生じる相続関連で困るケースを紹介します。

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認知症の被相続人・相続人がいるとどうなる 
持ち主が認知症だとアパートの管理や建て替えができない!

日本のアパート経営者は、8割強が個人であり、その60%を60歳以上が占めています。高齢化が進むと、アパート経営者の認知症リスクも高まることになります。そこには、意外な問題点が浮かびあがってきます。

 

[マンガ1]アパート経営者の父が認知症の場合

 

アパート個人経営者の6割が60歳以上

民営の賃貸アパート・マンション、そして借家は、図表1の円グラフを見るとわかるように、現在個人が経営する物件が全体の約82%を占めています。また図表2の円グラフにあるように個人経営者のうち、6割が60歳以上の高齢者です。今後、高齢化が進むとともに、オーナーが認知症になるケースは増えていくことが予想されます。

 

出典:(公財)日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」(2019年)
[図表1]民間アパートにおける個人経営の割合 出典:(公財)日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」(2019年)

 

出典:㈱価値総合研究所「賃貸住宅管理の現状について」(2013年)
[図表2]賃貸住宅の個人経営者における高齢者の割合 出典:㈱価値総合研究所「賃貸住宅管理の現状について」(2013年)

 

マンガ1のように、アパート経営をしているオーナーが認知症になった場合、その後の経営はどうなるのでしょうか。

認知症といっても、症状がさまざまで、1人で日常生活を送れるくらい軽度の方もいれば、寝たきりになって意思表示ができなくなり、「意思能力」が低下したと判断されるケースもあります。
 

オーナーが認知症になったらできなくなること

特に、アパート経営は、貸す方も借りる方も契約に基づいて運営されています。そのため、オーナーの意思能力がなくなってしまうのは深刻な問題を引き起こします。

たとえば、オーナーと入居者の賃貸借契約が結べなくなるので、新しく入居したい方を募集することができません。そのほか、契約の更新や解除もできなくなるのです。

また、マンガの例のように、建物の修繕も簡単には進められなくなります。小規模な修繕であれば可能でしょうが、本人確認が必要な大きな修繕、また借入れが必要な場合は、必ず本人の意思確認が必要です。特に所有するアパートの築年数がかなり古い場合は、あちらこちらと修繕があいつぐことも考えられますので、頭が痛い問題です。

実際のところ、そうした事務手続きなどは個人経営の場合は家族などが代わって行っているケースが多いようです。しかし、これは法的に無効となります。とはいえ、何もしないとなると、アパートの存続が危ぶまれるので難しい状況です。

もちろん、物件の売却にも影響が出ます。管理が困難になったので売却しようとしても、やはり賃貸借契約の時と同じように本人の意思確認が必須です。このため重度の認知症になってしまった場合は、売却はできなくなります。
 

『増えている認知症で一人暮らし』

一方で、オーナー側だけでなく、判断能力が低下した入居者の問題も起こっています。家賃の支払いが遅れたり、認知症の種類によっては妄想や幻聴、幻覚のために近隣トラブルを起こすこともあります。

孤独死に至ってしまったケースでは、借りていた部屋を元どおりにするための原状回復費は約47万円~450万円と言われます(出典:第9回・孤独死現状レポート。一般財団法人日本少額短期保険協会)。この費用は保証人が支払うことになります。一人暮らしの親族がいる場合は可能な限り、連絡を取り合える関係を築いておきたいものです。

 

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※本連載は、奥田周年氏の著書『新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続』(ビジネス教育出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続

新版 親が認知症と思ったら できる できない 相続

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