(※写真はイメージです/PIXTA)

「告発なんてしなければよかった……」社内でセクハラやパワハラを相談したことで、逆に嫌がらせや不利益を被るケースは少なくありません。もしもハラスメントを告発した直後に解雇を言い渡された場合、「不当解雇」にあたるのでしょうか。また、被害者が有利に交渉を進めるにはどうすればよいのでしょうか。実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」へ寄せられた相談をもとに、ハラスメントを告発した直後の解雇が法的にどう扱われるのか、横山令一弁護士が詳しく解説します。

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社長のハラスメントを告発した直後の「解雇」は不当か?

相談者Aさん(女性)は、数ヵ月前に建設部材を扱う営業会社に正社員として入社しました。試用期間を終え、正式に正社員として働きはじめた矢先、突然会社から解雇を言い渡されました。Aさんによると、Aさんを含めた女性社員が社長からセクハラ・パワハラの被害を受けており、そのことを人事部に相談したところ、今回の解雇に至ったそうです。

 

会社側は解雇理由として「能力不足」を挙げていますが、Aさんは「根拠がない。これは『不当解雇』に当たるのではないか」と疑問を抱いています。

 

裁判も視野に今後の対応を検討していますが、社内では過去にも多くの社員が解雇されており、社長が嘘をつくのは日常茶飯事であるため、自分に有利な形で解決できるのか不安を感じました。

 

そこでAさんは、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

(1)今回の解雇は「不当解雇」にあたる可能性はあるのか。

 

(2)このような場合、相談者はどのような流れで会社との交渉を進めたほうがいいのか。

 

(3)不当解雇を争っているあいだに、他社で就職活動をすることは不利に働くのか。

「不当解雇」の判断手法

使用者による解雇は、労働契約法16条により「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」として制約されています。

 

不当解雇が争われる裁判では、使用者がその解雇に正当な理由があることを主張し、労働者はその解雇の不当性をうかがわせる理由を主張することが一般的です。そして、双方の主張のうち、証拠によって証明された事実をもとに、解雇が有効か無効かが判断されます。

 

今回の事例では、使用者が表面上の解雇理由を取り繕っています。

 

労働者としては、「ハラスメントの告発をした直後に解雇されたのだから、報復に違いない」と主張したいところでしょう。しかし、報復目的といった主観的な事情は情況証拠から推測するしかなく、説得力が劣る面も否めません。

 

むしろ、使用者が解雇理由として主張する「(Aさんの)能力不足」という事実の有無が、第一の争点となると考えられます。それが証明されなければ、ハラスメントの告発への報復の意図の有無にかかわらず、解雇は正当理由が認められずに無効となるためです。

 

この事例では、試用期間を終えて本採用されたあとに「能力不足」を理由に解雇されています。しかし、労働者の能力が期待された水準に達しているかどうかは、試用期間中に判断すべきことです。本採用されたということは、能力について問題がなかったということですから、その後特に事情が変わっていないのであれば、その「能力不足」が正当理由と認められる可能性は低く、解雇は無効となる可能性が高いと考えられます。

 

ただ、後述する労働審判手続では、争点に関連する重要な事実は申立てをする段階で主張するよう労働審判規則9条で定められています。

 

そのため実務上は、労働審判の申し立ての段階で、「ハラスメントを告発したことに近接して解雇された」という経緯も、あわせて主張することになるでしょう。

 

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