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孫養子の有効性を巡る争い
日本は取得者課税の国であり、相続税の計算は法定相続人の数に大きく影響されます。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人数」であり、相続人が増えれば控除額も大きくなります。さらに累進課税であるため、相続人が倍になれば税額は3分の1〜4分の1に減ることもあります。
2016年の最高裁判決の事例を紹介します。2013年に82歳で亡くなった福島県の男性が、1歳の孫(本人の意思は問わず、長男の子)を養子縁組したケースです。当初、法定相続人は長男・長女・二女の3人でしたが、孫が加わることで4人となり、節税効果が生まれる一方で、長女と二女の法定相続分は減少しました。このため長女と二女は「縁組は無効」と訴えました。
一審では縁組は有効と認定されましたが、東京高裁は「税理士の助言による節税対策で、82歳の被相続人には孫との真実の親子関係を築く意思がなかった」として無効と判断。
しかし、2016年に最高裁第3小法廷は「節税目的と縁組の意思は共存し得る」と判断し、節税を目的とした養子縁組でも意思があれば有効であるとの初の判断を示しました。
過去の事例と制度改正
日本の相続税は超累進課税であり、子どもが多い資産家ほど相続税の総額は極端に少なくなります。
過去には、大阪で亡くなる直前に15人もの子と養子縁組をして節税を図った事例もありますが、このケースでは被相続人が意識不明だったこと、養子全員が相続放棄したこと、対象者が身内以外も含まれていたことから、国税局は認めませんでした。
こうした事情を受け、民法上は養子縁組の自由を認めつつ、相続税法では実子がいない場合は養子2人まで、実子がいる場合は1人までと制限する改正が行われています。
節税と税務当局の攻防
節税目的の養子縁組は、孫であっても税額を30%以上減らせることがあるため、資産家にとって魅力的な手段です。
ただし、孫養子に対しては税制上の控除や課税関係で実子より若干不利になる場合があり、国税当局は公平性を保つ措置を講じています。日本の相続税制度は厳しく、納税者と税務当局の間で節税と規制の攻防が続いています。アメリカのように相続税が緩やかな国から見ると、日本の制度は「金持ちいじめ」と映ることもあるでしょう。
奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表
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