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無理なく増税できるなら、ぜひとも検討したいところ
筆者は、財政が破綻する可能性は小さいと考えており、10年経てば増税が容易な時代が来るから増税を焦る必要はないと思っています。少子高齢化による労働力希少(労働力不足と呼ぶ人が多い)が進むと、「増税して景気が悪化しても失業が増えない」時代が来るからです。こちらについては、拙稿『巨額の財政赤字が積み上がる日本政府だが…「資金繰りは破綻しない」といえるワケ』を参照ください。
しかし、それまで巨額の財政赤字を放置しておくべきだと考えているわけではなく、無理なく増税できるのであれば、増税も選択肢でしょう。増税の候補として、今回は固定資産税について考えてみましょう。
固定資産税のメリットは、「金持ちから税を取れること」「東京一極集中の是正ができること」だと思います。
日本では、「金持ちから税を取る」というと高額所得者から所得税を取ることを考える人が多いのですが、巨額の資産を持ちながら所得税を支払っていない高齢者なども多そうなので、「金持ち」からもっと税を取るべきだと筆者は考えています。本来であればマイナンバーで資産を一括管理して、誰が金持ちなのかを税務署が把握できるようにすべきなのでしょうが、次善の策として固定資産税の増税を検討すべきだと考えています。
土地はあるけど金がない、という人が土地を手放す必要が出てきて困るといけないので、そういう人には「毎年土地の一部の所有権を物納して住み続け、死んだ時に国に引き渡す」といった工夫は必要でしょうが。
「東京一極集中」是正のメリット
筆者が固定資産税の増税を主張する、より一層重要な理由は、東京一極集中の是正に寄与すると期待できるからです。東京一極集中は、それ自体が望ましくありませんし、大災害時のリスクという点でも深刻です。
人間が東京に住んでいるだけで、空気を汚し、混雑を深刻化させ、大災害時のリスクを増すことになります。お互いが公害を出し合っているようなものです。そうした状況を改善するためには、東京の人口を減らすことです。
周辺住民に1万円の被害を与えている公害企業があるとして、その企業が1円しか利益をあげていないなら、操業を停止させるべきですが、10万円儲けているのであれば、1万円の罰金を課せばよいでしょう。それと同様で、東京に住むことで大いに稼いでいる人や、どうしても東京に住みたい人は、高い固定資産税を払っても残ればいいですし、そうでもない人には出ていっていただきましょう。
東京都民の住民税を引き上げるというのでは、都心と郊外を等しく住みにくくしてしまいますし、隣県への人口移動を促進するだけかもしれません。それよりも、地価の高い所から安い所へ(都心から郊外へ、他の地方都市へなど)引っ越してもらうためには、固定資産税の増税が有効なのです。
住民だけではなく、企業も郊外や地方への移転を考えてくれれば、従業員も引っ越すことになるかもしれません。営業部隊は都心に残り、経理部は郊外に移転する、といった企業が増えるだけでも都心の混雑は緩和されるでしょう。
東京から人が出ていくということは、地方都市が栄えることにもつながるはずです。東京のリスクが減って地方都市が栄えるならば、一石二鳥でしょう。
東京から地方に移り住む人が増えれば、地方都市で家が立つなど、需要が生まれることも期待できるでしょう。増税だけだと人々の懐が痛んで消費が減ってしまいそうですが、それを補うような需要が見込まれるとすれば、景気への悪影響という面でもほかの増税より優れているといえそうです。
大災害への備えは必須
東京一極集中の弊害は、大気汚染や混雑といった目に見えるものだけではありません。大災害のリスクを高めることも問題です。首都直下型地震が来たときの被害は、東京一極集中によって格段に高まっているはずですし、南海トラフ時の混乱も心配です。
東日本大震災のときの帰宅困難者のことを覚えている読者も多いでしょう。あのときは、都心でビルの倒壊や火災がほとんど起きなかったのが幸いでしたが、倒壊したビルで道が塞がれ、火災が発生したらどうなったか、想像するだけで恐ろしいです。
客が10人の劇場と1,000人の劇場では、火災が発生した場合の被害に大きな差が生じる可能性があります。過去に地方都市で発生したような地震が東京で発生すれば、比較にならないほど大きな被害となるかもしれません。たとえば地方都市の断水では日本中から給水車が支援に来ますが、東京が被災すれば給水車が不足する、といったことが頻発するでしょう。起きてみないと、なにがどうなるか想像するのはむずかしいですが、備えあれば憂いなしだと思いますよ。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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