(※写真はイメージです/PIXTA)

日本政府が抱える巨額の財政赤字。しばしば活発な議論が交わされ、ときに紙幣の大量印刷や預金封鎖といった過激な解決策が叫ばれることもありますが、実際には日本政府の財政破綻が起こる可能性は低いと考えられます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】

八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

資金繰りが続くから破綻しない

日本政府の財政赤字は巨額で、毎年の赤字が積み重なって借金の額も巨額に上っています。そこで、日本政府が破産する(財政が破綻する)かもしれないと、心配している人も多いようです。

 

しかし、筆者は日本の財政が破綻する可能性は低いと考えています。「日銀に紙幣を印刷させれば政府の資金繰りは問題ない」などというつもりはありません。「財産税で家計金融資産の半分を召し上げてしまえば借金は返せる」などというつもりもありません。そんなことをしなくても、政府の資金繰りは破綻しないのです。

 

企業でも政府でも、倒産するのは資金繰りが破綻した時です。黒字でも資金繰り倒産はあり得ますが、赤字でも資金繰りがまわっている間は破産しないのです。問題は、民間企業の場合には赤字が続くと銀行に見放されて資金繰りが続かなくなる、ということなのですが、日本政府にはそうした懸念はほとんど無いのです。それは、日本人投資家にとって日本国債が最も安全な資産だからです。

 

円建て資産の中では、日本国債が最も安全です。メガバンクに預金するより札束で持つより安全でしょう。米国債の方が紙屑になるリスクは小さいかもしれませんが、円高で損をするリスクを考えると、日本国債の方が安全でしょう。そこで、投資家たちは「仕方なく」日本国債を買うことになります。多くの投資家が日本国債を買えば、日本政府の資金繰りは懸念がなくなりますから、投資家たちの日本国債に対する恐怖心が薄らぎ、一層多くの投資家が日本国債を買うようになるでしょう。「他の投資家たちが買っているから大丈夫だ」と皆が考えているとすれば、投資家同士が互いに励まし合っているということになりますね(笑)。

数千年後には問題が自然に解消する

少子化が止まりません。一人っ子と一人っ子が結婚して一人っ子を産む流れが数千年続くと、日本人は最後の1人になり、その子は家計金融資産2,200兆円を相続します。その子が永眠するとそれが国庫に入るので、国の借金はすべて消えます。数千年待てば、問題は一気に解決するのです。

 

もちろん、本当にそんなことが起きるとは思っていませんが、この思考実験は2つのことを教えてくれます。1つは「政府の借金は大きすぎるから、いつか破綻するはずだ」と考えるのは短絡的すぎる、ということです。

 

もう1つは、「政府の借金は子孫のクレジットカードで飲み食いしているようなもので、世代間不公平だ」というのも誤りだ、ということです。遺産のことも考慮すれば、世代間の不公平などありません。あるのは遺産が相続できる子とできない子の世代内不公平です。だから筆者は相続税の増税を主張しているわけですが、その話は別の機会に。

 

余談ですが、子孫の負担を減らそうとして財政再建のために増税すれば、筆者たちは預金を引き出して納税するので、子供たちに引き継ぐ遺産が減ります。そんなことをしても子孫は喜びません(笑)。

10年後には増税が容易な時代に

筆者は、数千年の間何もせずに放っておこうと考えているわけではありませんが、増税を急ぐ必要はない、と考えています。現在すでに少子高齢化で労働力希少(労働力不足と呼ぶ人が多い)になっていますが、10年経てばさらに労働力が希少となり、不況でも失業者が増えない時代になるでしょう。そうなれば、「増税で不況になって失業者が増えたらどうしよう」と考える必要なく「気楽に」増税できるようになるはずです。

 

さらにいえば、労働力希少による賃金上昇でインフレになるかもしれません。そうなれば日銀が金融を引き締めようとするでしょうが、政府は日銀に対して「政府が増税をして景気を悪化させるので、インフレは止まるでしょう。金利は上げないで大丈夫です」というはずです。金利が上がると政府は利払いが増えて大変だからです。結果として、増税は財政再建とインフレ抑制の一石二鳥となり、広く支持される政策となるでしょう。

国債暴落は起こり得るが、破綻は回避できるかも

日本人にとっては、日本国債が最も安全な資産ですが、仮に経常収支赤字が続いて日本の対外純資産がマイナスになり、日本政府が外国人から借金をしなければならなくなったら、国債が暴落するかもしれません。もっとも、現在の経常収支の状況を見ると、そうした可能性は限りなく小さそうです。

 

日本人投資家が一斉に国債を売ることで国債相場が暴落し、新規国債が発行できなくなるという可能性は皆無では無いでしょうが、それでも最後は何とかなる可能性が高いと筆者は考えています。その話は別の機会に。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義

経済評論家

 

注目のセミナー情報

【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション

 

【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録