中国政府による“メーカー選別”の始まり…2026年の中国自動車、生き残りをかけた「ホワイトリスト入り」のボーダーライン

中国政府による“メーカー選別”の始まり…2026年の中国自動車、生き残りをかけた「ホワイトリスト入り」のボーダーライン
(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年8月、韓国仁川で中国製バッテリーを搭載したEVが発火し、大規模火災が起こった。世界市場で熾烈な「EV争い」を繰り広げる中国自動車産業にとって、こうした事故は「EVシフト」に水を差す事態だ。世界の車載電池の6割を中国が供給する今、安全性と品質の確保は急務となっている――。本稿では、湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、電動化シフトの推進に伴う中国政府の政策転換と、2026年7月から施行する「新たな国家基準」についてみていく。

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世界の6割が中国製EV電池…「質」重視の政策転換は功を奏すか

2024年の中国の車載電池搭載量は前年比42%増の548GWhとなり、世界全体の61%を占めている。EV向けが着実に増加する一方、PHV向けも好調だ。

 

電動モードで航続距離150kmのPHVなら30Whの電池が搭載されているため、PHV市場の拡大はリン酸鉄電池メーカーにも追い風となって、生産コストの安いリン酸鉄系電池が電池搭載量全体の74.6%に達した【図表1、2】。国内市場の需要が増加する一方、海外輸出も増加し、電池輸出量は生産量全体の13%を占めている。

 

出所:CABIA、SNEリサーチ発表
[図表1]中国の車載電池搭載量の推移 出所:CABIA、SNEリサーチ発表

 

出所:CABIA、SNEリサーチ発表より筆者作成
[図表2]種類別の中国の車載電池搭載量割合 出所:CABIA、SNEリサーチ発表より筆者作成

 

実際、搭載実績があった電池メーカー数は、2016年の144社から2024年は55社にまで減少した。2024年の中国車載電池市場では、CATLとBYDがそれぞれ45.1%、24.7%のシェアを占め、圧倒的強さを見せており、上位10社のシェアは96%に達し、残りの4%を45社で分けている【図表3】。

 

出所:CABIA発表より筆者作成
[図表3]企業別の中国の車載電池市場シェア(搭載量ベース、%) 出所:CABIA発表より筆者作成

 

現在中国には、質とコストの両面を追おうとする電池メーカーが多い割に、製品の安全性・安定性を維持できる電池メーカーは限られている。

 

中国政府は、電池生産能力の増強に障壁を設ける一方、電池メーカーに技術のイノベーションを求め、「質」を重視する政策への転換を示した。こうした政策の見直しは、電池メーカーの再編を告げるものである。

 

 

湯 進

みずほ銀行ビジネスソリューション部

上席主任研究員

 

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※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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