実家があった場所は、茶色い土がむき出しに
高速を降り、懐かしい市街地を走り抜けたその先のエリアに田中さんの実家があります。ところが、角を曲がるといつも見えてくる、大きな庭木がありません。
「あれ…?」
到着した実家は、フェンスも建物も撤去されており、茶色い土がむき出しの場所となっていました。
「ウソだろ!? なにかの間違いじゃないのか…」
目にした光景に、呆然と立ち尽くしてしまった田中さん。
「母さんに、今日帰るってLINEしたのに…」
すると、背後から聞き覚えのある声がしました。
「リョウちゃん、どうしたのこんなところで?」
振り返ると、田中さんが子どものころから知っている、お隣の奥さんでした。
「実家がこんなことに…」
「えっ、あなた知らないの!?」
奥さんがいうには、ごく最近、田中さんの両親はこれまで暮らしていた実家の土地を売却して、数百メートル離れた別の場所に転居したというのです。
奥さんは「ちょっと待ってね」というと、新しい実家の住所を書いたメモを持ってきてくれました。
田中さんはもらったメモと口頭での説明をもとに数分車を走らせると、坂の上に新しい建物が見えてきました。そこは広々とした敷地に建つ、大きな一軒家でした。
