(※画像はイメージです/PIXTA)

金(ゴールド)の価格が10月21日、前日比5.5%急落し、1日の下落幅としては過去10年余りで最大を記録した。とはいえ、金価格は年初来で主要通貨建てすべてに対して上昇し、4,000ドルを突破しており、長期的な上昇トレンドに変化はないといえるだろう。この背景には、米ドル安の見通しや新興国中央銀行の買いなど、複数の構造的要因が重なっていると考えられます。10月の金市場動向から、高騰を支える要因と今後の展望についてみていきましょう。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。

金が「高くても売られにくい」理由

◆金、株との連動崩れ堅調維持

夏の間、テック株が反発を続けるなか、金価格は1オンス約3,250~3,350ドルのレンジ内にとどまり、S&P500指数は金換算ベースで緩やかに上昇しました※14。しかし、S&P500/金価格比率は9月に急低下し、3月以降、パンデミック前の平均値を下回る水準で推移しています※15

 

これは、金価格を支える長期的な要因が存在し、不確実性プレミアム(恐らくは米国の貿易、財政赤字、外交政策、インフレをめぐる不確実性に関連している)が織り込まれている可能性が高いことを示唆しています。

 

◆株高でも金の“守備力”は健在

たしかに、過去の市場パターンにのっとると、クロスアセット・ボラティリティが急低下するなかで米国株式市場が4月半ばの調整局面から8~9月に新たな強気相場に移行する過程では、金市場の調整が伴ったはずです。しかし、同期間を通じて金価格は底堅さを示し、その後、第3四半期末にかけて最高値を更新する上昇を見せました※16

 

米国株が過去最高水準にあるなかで金が最高値を更新していることは、他の条件が全て同じであれば、次のリスクオフ局面やボラティリティショック時において金保有の魅力を高める可能性があります。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。

 

 

Aakash Doshi(Head of Gold Strategy)、Mohanad Abukhalaf (Gold Strategist)、Diego Andrade(Senior Gold Strategist)、アーロン・チャン(ゴールド・ストラテジスト)

 

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〈注釈〉
※1 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※2 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※3 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※4 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※5 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※6 Source: Automatic Data Processing, Bureau of Labor Statistics, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※7 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※8 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※9 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※10 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※11 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※12 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※13 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※14 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※15 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※16 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.

〈用語集〉
・中央銀行……国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。

・COMEX……コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場。

・金のスポット価格……スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。

・LBMA午後金価格(米ドル/オンス)……LBMA金価格はIBAが独立して管理し、価格算出のためのオークション・プラットフォームを提供していますが、知的所有権はLBMAに帰属します。プラットフォームは、電子的に取引および監査が可能で、証券監督者国際機構(IOSCO)の金融ベンチマークに関する原則に沿って設計されています。

・実質金利……インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。

・米連邦公開市場委員会(FOMC)……米連邦準備制度内にある委員会で、金融政策を決定します。

・解放の日……広範にわたる関税措置の実施について、米貿易政策の転換点という位置づけを象徴するために用いられた言葉。米国の産業を海外の製造業への依存から「解放」し、貿易不均衡を解消するという考えを反映しています。

・脱ドル化……各国が国際貿易、金融取引、外貨準備における米ドル依存を減らすプロセスで、多くの場合、その背景には地政学的動機、制裁リスク、自国通貨の主権確保の取り組みがあります。

・関税……外国から輸入される財とサービスに国が課す税金で、通常、財政収入を拡大するため、あるいは国内産業を海外との競争から守るための手段として用いられます。【ご留意事項】
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。
本稿に示されている見解は2025年9月17日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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