金急落も一時は「4,000ドル突破」…長期的上昇トレンドの買いを支える市場の“不安”【10月の金市場】
(※画像はイメージです/PIXTA)
金(ゴールド)の価格が10月21日、前日比5.5%急落し、1日の下落幅としては過去10年余りで最大を記録した。とはいえ、金価格は年初来で主要通貨建てすべてに対して上昇し、4,000ドルを突破しており、長期的な上昇トレンドに変化はないといえるだろう。この背景には、米ドル安の見通しや新興国中央銀行の買いなど、複数の構造的要因が重なっていると考えられます。10月の金市場動向から、高騰を支える要因と今後の展望についてみていきましょう。なお、本稿はステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの4名のストラテジストによる共同執筆です。
「新興国」の金需要も金価格の下支えに
◆新興国の戦略的な金購入が、金価格を下支えする“安定剤”に
新興国の中央銀行は引き続き金準備を積み増しています。購入量は2022~24年のピークからやや減少傾向にありますが(当社の予想通り)、それでも歴史的にみて高い水準を維持しています※12。
中央銀行による金購入は、地経学的・戦略的性質が強く、その他の金消費(宝飾品など)に比べて価格弾力性が低い傾向にあります。これは、金価格をより高い水準で下支えし、ダウンサイド・ボラティリティを抑制する構造的要因となります。
◆中国の金需要、夏に急伸
中国の通貨以外の用途の金輸入から推測される中国のリテール金需要は、今夏に予想を上回る伸びを見せました。今年7~8月の取引量は105トンを超え、前年同期の66トンを大きく上回りました※13。
いまだ続く米中貿易摩擦の影響、人民元安ヘッジ、不動産市場回復の心許なさが金消費を支えている可能性があります。さらに、アジア太平洋地域各国の政策措置は、同地域の金需要のトレンドをさらに支える可能性があります。
【12/18(木) 『モンゴル不動産セミナー』開催】
坪単価70万円は東南アジアの半額!! 都心で600万円台から購入可能な新築マンション
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
ヴァイス・プレシデント
ゴールド・ストラテジスト
2024年6月にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社。グローバルのSPDR(スパイダー)・ゴールド・ストラテジー・チームに所属する日本拠点のストラテジストとして、日本における機関投資家ビジネスおよびファンドやETFを担当するインターミディアリービジネスのセールス活動を、金(ゴールド)とETFプロダクトの専門家としてサポート。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社以前は、ウェルメイ株式会社のゼネラルマネージャーとして不動産投資の評価や新しい投資機会のソーシング業務に従事。それ以前は、ナットウエスト・マーケッツ証券会社、ソシエテ・ジェネラル証券株式会社、ICBCスタンダードバンクでさまざまな役職を歴任。ICBCスタンダードバンクでは金を含むプレシャス・メタル(貴金属)の営業担当として、ビジネスの推進や顧客リレーションの開拓も担当。ボストン大学経済学学士およびマギル大学大学院経営学修士を取得。また、慶応義塾大学にて日本語プログラムを修了。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載【ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント】金市場を徹底分析
〈注釈〉
※1 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※2 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※3 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※4 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※5 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※6 Source: Automatic Data Processing, Bureau of Labor Statistics, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※7 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※8 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※9 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※10 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※11 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※12 Source: World Gold Council, State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※13 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※14 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※15 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
※16 Source: Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management, as of 9/30/2025.
〈用語集〉
・中央銀行……国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性を持って管理する金融機関。
・COMEX……コモディティ(主に金、銀、銅、アルミニウム)の先物を取引する市場。
・金のスポット価格……スポット市場における金の価格。国際的通貨コード「XAU」で表記される、1トロイオンス当たりの金価格。米ドル建て。
・LBMA午後金価格(米ドル/オンス)……LBMA金価格はIBAが独立して管理し、価格算出のためのオークション・プラットフォームを提供していますが、知的所有権はLBMAに帰属します。プラットフォームは、電子的に取引および監査が可能で、証券監督者国際機構(IOSCO)の金融ベンチマークに関する原則に沿って設計されています。
・実質金利……インフレ調整後の金利。物価上昇の影響を取り除くことで、真の借入れコストおよび投資による実際の利回りを反映します。
・米連邦公開市場委員会(FOMC)……米連邦準備制度内にある委員会で、金融政策を決定します。
・解放の日……広範にわたる関税措置の実施について、米貿易政策の転換点という位置づけを象徴するために用いられた言葉。米国の産業を海外の製造業への依存から「解放」し、貿易不均衡を解消するという考えを反映しています。
・脱ドル化……各国が国際貿易、金融取引、外貨準備における米ドル依存を減らすプロセスで、多くの場合、その背景には地政学的動機、制裁リスク、自国通貨の主権確保の取り組みがあります。
・関税……外国から輸入される財とサービスに国が課す税金で、通常、財政収入を拡大するため、あるいは国内産業を海外との競争から守るための手段として用いられます。【ご留意事項】
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。
本稿に示されている見解は2025年9月17日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
提供された情報は、投資助言に該当するものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。本情報は、有価証券の購入の勧誘または売却の申出とみなされるべきものではありません。本情報は、投資家の特定の投資目的、戦略、税務上の地位または投資期間を考慮したものではありません。ご自身の税務・財務アドバイザーにご相談ください。
ここで言及されている商標およびサービスマークは、それぞれの所有者の所有物です。第三者のデータ提供者は、データの正確性、完全性または適時性に関していかなる保証または表明も行わず、また、かかるデータの使用に関連するいかなる種類の損害に対しても責任を負いません。
当社の書面による明示的な同意なしに、本著作物の全部または一部を複製、複写もしくは送信し、または第三者に開示することはできません。
コモディティやコモディティ指数に 連動した証券は、全体的な市場動 向の変化や金利の変化、さらには天 候、疾病、通商停止や政治的ないし 規制的な展開、対象コモディティに 係る投機者や裁定者の取引活動な ど、他の要因の影響を受けます。
コモディティへの投資は大きなリスクを伴うため、すべての投資家に適した投資対象ではありません。
過去の実績は、将来の投資成果を保証するものではありません。
本資料は、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが作成したものをステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が和訳したものです。内容については原文が優先されることをご了承下さい。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第345号
加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 投資信託協会、日本証券業協会
© 2025 State Street Corporation.
8430467.1.1.APAC.RTL
Exp date:9/30/2026