調査官への「態度」が、調査結果を左右することも
2.身分証明書の提示
調査官が事務所などに臨場する際は、必ず身分証明書と質問検査章を携行し、身分と氏名を明らかにします。
税務署員を装い、現金や小切手をだまし取る詐欺事件もあるため、必ず身分証明書を確認しましょう。不審に思った場合は、所轄の税務署に連絡して確認することが大切です。
3.質問事項への回答と帳簿書類の提示または提出
調査では、調査官の質問に対して正しく回答することが求められます。帳簿や書類の提示・提出は、法律で認められた質問検査権の行使に基づくものであり、速やかに対応する必要があります。
偽りの回答や、正当な理由なく提出を拒否した場合は、罰則が科される可能性があります。
調査官は限られた日数で調査を行いますので、調査対象期間のすべての取引を確認することは不可能です。よって、納税者の「誠実さ」や「隠し事の有無」を心証で判断する場合がありますので、質問への態度が調査の印象を左右します。
実務上よくあるのが、「なにもやましいことがないのに、緊張や不安から質問にうまく答えられない」ケースです。これ「なにか隠しているのでは」と誤解され、調査が長引くこともあります。
反対に、誠実に回答すれば、取引先への反面調査(取引先への確認調査)を回避できる可能性があります。
4.帳簿書類の預かりと返還
調査官が必要と判断した場合、納税者の承諾を得たうえで帳簿書類を一時的に預かることがあります。
その際には必ず「預り証」が発行され、調査終了後には預り証と引き換えに書類が返還されます。
近年は、書類紛失や「借りた・返した」のトラブルを防ぐため、できるだけ書類を借用せず、現場で確認する方針が一般的になっているようです。このため、調査官が複数回訪問するなど、調査期間が長期化する傾向も見られます。
「商品券」の不正利用は反面調査につながりやすい
5.取引先等への調査(反面調査)
調査の必要がある場合、税務署は取引先や雇用主などに対しても質問や検査を行います。これを反面調査といいます。
反面調査は、取引先に迷惑をかけたり信用を損なったりするおそれがあるため、取引記録を整理し、自社で説明できる状態にしておくことが大切です。
なお、反面調査につながりやすい事例として、商品券の不正利用が挙げられます。たとえば、商品券を購入した際の領収書を交際費として計上し、実際には自分で使用するケースや、配ったと偽って換金するケースです。このため、商品券は調査時に必ず確認される項目です。
正しい経理処理を行うためには、「商品券の配布先リストを作成する」「実際に配布した事実を証明できるようにする」といった対応が重要です。これにより、無用な反面調査を回避できます。
また、商品券を交際費として使用する場合は、渡す際に「交際費として処理しています」と伝えることで、受け取った側が適切に申告(法人は雑収入、個人は確定申告)でき、トラブルを避けることができます。
