「パナマ文書」から9年――結局実現しなかった“租税回避スキーム開示義務”、国税OBの斡旋廃止が生んだ「監視の空白」と士気低下【元マルサの税理士が暴露】

「パナマ文書」から9年――結局実現しなかった“租税回避スキーム開示義務”、国税OBの斡旋廃止が生んだ「監視の空白」と士気低下【元マルサの税理士が暴露】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「パナマ文書」公表をきっかけに、国税当局は租税回避スキームを企業や富裕層に指南する税理士に対し、スキーム内容の開示を義務づける制度の導入を検討しました。しかし、法制化は見送られ、制度は実現していません。その背景には、実効性への疑問と、税理士業界・政治サイドからの強い反発がありました。結果として、租税回避は依然として“見えない領域”にとどまり、課税の公平に対する信頼に深い影を落としています。

「パナマ文書」が突きつけた課題とOECDの勧告

2016年、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した富裕層や多国籍企業の資金隠しを暴いた「パナマ文書」が世界を揺るがしました。

 

これを受け、OECD(経済協力開発機構)は各国に対し、「租税回避スキームの開示義務(Mandatory Disclosure Rules:MDR)」を導入するよう勧告しました。この制度は、税理士や会計士などスキームを設計・助言する側(中間者=インターミディアリー)に対して、租税回避的な取引内容を税務当局へ報告させるものです。

 

狙いは、タックスヘイブンや国際的な取引構造を利用した「見えない節税策」を早期に把握し、各国が迅速に対策を取れるようにすることでした。

日本では検討されたが、法制化は見送りに

日本の国税庁もこのOECD勧告を受けて、税理士に租税回避スキームの開示を義務づける制度の導入を検討しました。

 

しかし、以下の理由などから法制化は見送られました。

 

・税理士の守秘義務との整合性
・税理士業界からの強い反発
・実効性への疑問(「バレないスキーム」を売りにする以上、正直に提出される可能性は低い)

 

結果として、日本では税理士に対する租税回避スキームの開示義務制度は導入されていません。

 

一方、イギリスやEU諸国、カナダ、オーストラリアなどでは制度化が進み、租税回避の“透明化”が一定の成果を上げています。

 

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