「パナマ文書」が突きつけた課題とOECDの勧告
2016年、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した富裕層や多国籍企業の資金隠しを暴いた「パナマ文書」が世界を揺るがしました。
これを受け、OECD(経済協力開発機構)は各国に対し、「租税回避スキームの開示義務(Mandatory Disclosure Rules:MDR)」を導入するよう勧告しました。この制度は、税理士や会計士などスキームを設計・助言する側(中間者=インターミディアリー)に対して、租税回避的な取引内容を税務当局へ報告させるものです。
狙いは、タックスヘイブンや国際的な取引構造を利用した「見えない節税策」を早期に把握し、各国が迅速に対策を取れるようにすることでした。
日本では検討されたが、法制化は見送りに
日本の国税庁もこのOECD勧告を受けて、税理士に租税回避スキームの開示を義務づける制度の導入を検討しました。
しかし、以下の理由などから法制化は見送られました。
・税理士業界からの強い反発
・実効性への疑問(「バレないスキーム」を売りにする以上、正直に提出される可能性は低い)
結果として、日本では税理士に対する租税回避スキームの開示義務制度は導入されていません。
一方、イギリスやEU諸国、カナダ、オーストラリアなどでは制度化が進み、租税回避の“透明化”が一定の成果を上げています。
