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「老後破綻」より深刻な、「心の孤立」
信子さんは怒りに震えながらも、一人になると胸の奥にわずかな不安がよぎります。
「どうして、あんなことをいってしまったんだろう」
息子の嫁・美穂さん(仮名)は穏やかで礼儀正しい女性でした。結婚当初から距離をとりがちな信子さんに対しても、毎年誕生日や母の日には欠かさず贈り物をしてくれるような、優しい人です。
しかし、信子さんにはどうしても許せない過去のわだかまりがありました。亡き夫の遺産のわけ方を巡って、雅志さん夫婦と一度揉めたことがあったのです。それ以来、「あの嫁はお金目当てだ」という疑念が消えませんでした。時折、それを雅志さんに零すと、「美穂が強く主張したわけではなく、当時の手続き上の誤解だ」そう、何度も説明をされました。しかし、美穂さんへの疑いは拭えません。
そうしたいざこざを修復する機会を逃したまま、年月だけが過ぎていったのです。
信子さんは雅志さんとの絶縁後も、年金と預貯金だけで慎ましい生活を続けました。近所づきあいも減り、話し相手はテレビとスーパーのレジ係くらい。通帳の残高が増えるたびに、なぜか胸の奥が空っぽになっていくのを感じました。
総務省の調査によると、65歳以上の単身高齢者のうち、約4割が「誰とも会話しない日が週に3日以上ある」と答えています。また、内閣府の「孤独・孤立対策白書(2024年)」では、資産の多い層ほど人間関係が希薄になる傾向が指摘されています。経済的なゆとりが心の余裕を保証するわけではないのです。
「子どものために貯めてきたのに、どうして誰も会いに来てくれないのかしら……」
信子さんは、テーブルに並べた誰にも出されない茶菓子をみつめながら、ぽつりとつぶやきました。
お金は「守るもの」ではなく、「つなぐもの」
老後の資産形成は確かに重要です。しかし、ファイナンシャルプランナーとして多くの家庭を見てきた経験からいえるのは、「守る」ことだけに執着すると、やがて人間関係の破綻を招くということ。信子さんのように、資産を一人で抱え込むケースでは、認知症リスクや相続トラブルの火種が大きくなる傾向にあります。
たとえば、信託制度を活用すれば、「信頼できる家族が資金を管理し、本人の生活費を確保する」仕組みを作ることができます。また、生前贈与を計画的に行うことで、家族との対話を増やしつつ、税負担を減らすことも可能です。
「お金をどう使うか」は、家族の絆をどう残すか、という問いでもあります。人は、遺された財産の金額よりも、「そのお金に込められた思い」によって結びついていくものです。
もしあなたの親が信子さんのように“お金を守りすぎている”と感じたなら、まずは「どう使いたいのか」を一緒に考えることから始めてみてください。そこには、老後の安心だけでなく、家族の未来をつなぐ大切なヒントが眠っています。
そして、もし信子さんがもう一度息子に会えるなら——。「ごめんね。お金より、あんたたちと過ごす時間のほうが大事だった」と、きっとそういうはずです。その言葉こそが、なによりも価値のある遺産なのですから。
波多 勇気
波多FP事務所 代表
ファイナンシャルプランナー
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