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胸を膨らませた移住だったが…直面した「北海道の思わぬ現実」
「ここでなら、年金だけで十分やっていけるはずだ」
斎藤誠一さん(仮名/66歳)は、妻の佳代さん(仮名/64歳)とそう語り合いながら、東京都内の賃貸マンションを引き払いました。夫婦の年金は合計で月19万円ほど。都内で暮らしていたころは、家賃だけで8万円が消え、さらに光熱費や食費を合わせると毎月赤字ギリギリ。家計は苦しく、地方移住を常に視野に入れていました。
移住先に選んだのは、北海道の道央にある人口5万人ほどの地方都市。スーパーのチラシには「大根1本78円」「鮭1切れ100円」という驚きの文字が並び、野菜も魚も東京より明らかに安い。住まいは2LDKの間取りでも家賃が4万円台でした。
「これなら年金暮らしでも安泰だ」と、都内との物価の違いを実感した二人。2025年用の年賀状には新居の前で仲良くピースして写る写真に、「北海道に移住しました!」と誇らしげに新生活の喜びを書き添えました。
最初の数週間は、のどかな風景に心を奪われ、散歩やドライブに出かける日々。佳代さんは「毎日が新婚旅行みたい」と笑っていました。
しかし、北の大地の冬はそんなに甘くありません。11月時点で気温が氷点下を下回るようになると、状況は一変します。
「こんなに灯油が必要なのか……。東京ではエアコンで済んでいたのに」
暖房を止めれば室内の水道管が凍結するため、24時間ストーブを稼働させざるを得ませんでした。灯油代は、実に月3万円超。加えて電気代も跳ね上がりました。さらには、積雪が始まると車の必需性が増し、タイヤ交換や除雪道具などの費用がのしかかります。
「買い物や病院も車がないと不便で……。燃料代や維持費まで考えていなかったな。北海道の本格的な冬は厳しく、雪かきは思った以上に重労働。腰を痛めそうだ……」
誠一さんはため息をつきました。年金だけで余裕ある生活を送るはずが、気づけば毎月2万円以上の赤字という都内暮らしよりも厳しい状況。憧れの移住生活では、わずか半年で苦しい現実を突き付けられてしまったのです。
