円安局面でリターンが大きいのはヘッジあり?なし?…日本の投資家に問われる、金投資戦略を検証
(※画像はイメージです/PIXTA)
金は長らく個人や各国政府により貴金属として評価され、今日も使用されている最も古い交換手段および価値保存手段の一つです。世界市場において、金は米ドル建てで取引されるため、金と米ドルの間にはしばしば逆相関の関係が生じます。日本など米国外の投資家にとっては、それが為替リスクをもたらします。従って、日本の投資家による金投資のリターンは、米ドル建ての金価格と米ドル・円為替レートの変動という2つの主要因に影響されます。そこで今回は、2000年以降の25年分のデータをもとに、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント社のゴールドストラテジストであるアーロン・チャン氏が、「金と円」の関係とヘッジの有効性について考察します。
長期的なリターンのパターン
検証期間全体を通じて、ヘッジなしの金投資の平均月次リターンは1.02%、対するヘッジありのリターンは0.71%となっています。この0.31%ポイントの差は、全体的な円安傾向と、月平均約0.19%のヘッジコストという2つの主要因を反映しています※6。
これらのパターンはサブ期間を通じて一貫しています。
・2000年から2006年にかけて、ヘッジなしの金投資の平均月次リターンは1.20%だった一方、ヘッジありのリターンは0.74%でした※7。
・2007年から2019年までは、米ドル・円レートがおおむね安定的に推移したため、パフォーマンスの差は縮小し、ヘッジなしの平均月次リターンは0.62%、ヘッジありは0.58%となりました※8。
・2020年以降は、着実に円安が進み、円は対米ドルで月平均0.53%下落しています。その結果、ヘッジなしの平均月次リターンは1.74%に上昇した一方、ヘッジありのリターンは1.00%にとどまっています※9。
いずれの期間でも、ヘッジなしのパフォーマンスがヘッジありを上回っており、特に著しい円安局面ではそれが顕著になっています。そうした局面では、ヘッジありの投資家はヘッジコストを負担するだけでなく、有利な為替差益を逃すことにもなっています。
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ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社
ヴァイス・プレシデント
ゴールド・ストラテジスト
2024年6月にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社。グローバルのSPDR(スパイダー)・ゴールド・ストラテジー・チームに所属する日本拠点のストラテジストとして、日本における機関投資家ビジネスおよびファンドやETFを担当するインターミディアリービジネスのセールス活動を、金(ゴールド)とETFプロダクトの専門家としてサポート。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社に入社以前は、ウェルメイ株式会社のゼネラルマネージャーとして不動産投資の評価や新しい投資機会のソーシング業務に従事。それ以前は、ナットウエスト・マーケッツ証券会社、ソシエテ・ジェネラル証券株式会社、ICBCスタンダードバンクでさまざまな役職を歴任。ICBCスタンダードバンクでは金を含むプレシャス・メタル(貴金属)の営業担当として、ビジネスの推進や顧客リレーションの開拓も担当。ボストン大学経済学学士およびマギル大学大学院経営学修士を取得。また、慶応義塾大学にて日本語プログラムを修了。
なお、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社が行う資産運用関連業務のブランド名である。
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連載【ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント】金市場を徹底分析
〈注釈〉
※1 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
※2 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
※3 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
※4 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
※5 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from October 1, 2008 to October 31, 2008.
※6 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
※7 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to December 29, 2006.
※8 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2007 to December 31, 2019.
※9 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2020 to July 31, 2025.
※10 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
※11 Bloomberg Financial L.P. and State Street Investment Management. Data from January 1, 2000 to July 31, 2025.
★1 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、データ期間: 2000年1月1日~2025年7月31日、注記:307ヵ月の観測期間のうち、円相場が安定していたため、4つのいずれの相場局面にも該当しなかった月が1ヵ月ありました。したがって、棒グラフには合計306ヵ月が示されています。
★2 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント、データ期間:2000年1月1日~2025年7月31日、注記:円建て金価格(為替ヘッジなし)は(1)米ドル建ての金価格のリターンと(2)米ドル・円レートのリターンで形成されます。これに対して、円建て金価格(為替ヘッジあり)は(1)米ドル建ての金価格のリターンと(3)ヘッジコストで構成されています。一般的な指針として、為替ヘッジは円高局面ではプロテクションを提供する一方、円安時にはリターンを抑制する可能性があります。
★3 出所:ブルームバーグ・ファイナンスL.P.、ストリート・インベストメント・マネジメント、データ期間:2000年1月1日~2025年7月31日
〈用語集〉
・中央銀行……国または国家連合のために、貨幣および信用の創造と分配を独立性をもって管理する金融機関。
・中央銀行金協定……第1次中央銀行金協定(CBGA-1)は、ワシントン金協定とも呼ばれ、1999年9月26日に欧州15ヵ国の中央銀行と欧州中央銀行(ECB)によって締結されました。
各国中銀による協調性を欠いた売却と金の貸出増加が価格下落を招く事態となり、同協定は金市場を安定化させることを目的としていました。
同協定では、通貨準備における金の役割が再確認され、公的部門の活動に制限が設けられました。署名国中央銀行による金の売却の総量は5年間で2,000トン(年間約400トン)を上限とし、金の貸出やデリバティブの利用を増加させないことで合意しました。
この措置は不確実性を軽減し、透明性を高め、現代の金市場ダイナミクスにおける転換点となりました。
同協定はその後、2004年、2009年、2014年と3回にわたり延長・更新されました。2019年に、ECBはこの20年続いた協定を延長しないことを発表し、金は依然として重要な準備資産だと指摘しました。
ECBと同協定に署名した21ヵ国の中央銀行は、大規模な金売却の計画はないことを確認し、中央銀行は10年近くにわたり金を買い越していると強調しました。
【ご留意事項】
本書は、投資の推奨や投資アドバイスを意図したものではなく、そのようなものとして依拠されるべきではありません。
本稿に示されている見解は2025年9月17日時点のSPDRゴールド戦略チームの見解であり、市場やその他の状況によって変わる場合があります。本資料には、将来の見通しと見なされる可能性のある記述が一部含まれています。その様な記述は、将来のパフォーマンスを保証するものではなく、実際の結果や展開はこれら予想とは大きく異なる場合がある点にご注意ください。
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Exp date:9/30/2026