(※写真はイメージです/PIXTA)

副業やフリーランスといった柔軟な働き方が広がり、会社に縛られず収入を得る人が増えています。中には複数の仕事を掛け持ちし、正社員以上の年収を得る非正規雇用者もいます。しかし、目の前の収入はあっても、「将来への安心」とは必ずしも結びつかないのが現実です。特に“老後の年金”に不安を抱える人は多く、ある日ふと気づく「制度の壁」が、働き方そのものを見直すきっかけになることもあります。

「副業収入」と「厚生年金」は無関係

原則として、厚生年金に反映されるのは本業の雇用主を通じて支払われる報酬です。副業収入が給与所得でなければ、年金額に影響しません。

 

また、厚生年金に加入していても、収入の大部分が「副業(個人事業主)」に偏っていると、老後に受け取れる年金額は思ったよりも少ないケースがあります。

 

仮に月収40万円を得ていても、そのうち30万円が副業収入だった場合、年金額の算定に影響するのは「残りの10万円分」だけという事態も起こり得ます。

 

「じゃあ、そのぶん貯金すればいい…と思うかもしれません。でも、物価も税金も上がっているなかで、どれだけあれば安心なのか、わからなくて」

 

田村さんはこの春、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入を検討し始めました。しかし、所得控除のしくみや受け取り方の税制など、理解しづらい点も多く、足踏みしている状況だといいます。

 

「なんでこんなに複雑なんだろう、って思います。でも、“今”の収入が多い人ほど、“将来も安泰”とは限らないことは、身にしみて感じています」

 

副業が当たり前の時代となった今、「多様な働き方」と引き換えに、「制度からこぼれ落ちるリスク」も同時に抱える人が増えています。

 

厚生労働省『令和4年 就業構造基本調査』によると、非農林業従事者のうち副業をしている就業者は約305万人(5年前に比べ60万人増加)。また、追加就業希望者は493万人(5年前に比べ93万人増加)。働き方の多様化が進む一方で、公的年金制度とのミスマッチや、将来の不安を感じる声も少なくありません。

 

たとえ収入が多くても、それが将来の生活を保障してくれるとは限らない――田村さんのような“今は稼げている非正規”こそ、見えないリスクに目を向ける必要がありそうです。

 

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