「このままずっと住む?」妻のひとことが転機に
「資産になると思って買ったんです。でも、10年住んでみて、考えが変わりました」
そう語るのは、神奈川県内の駅近タワーマンションに住んでいた松岡賢治さん(仮名・58歳)。当時の購入価格は6,800万円。頭金1,000万円を入れ、月々の住宅ローンは約15万円。奥さまと共働きで世帯年収は1,200万円以上あり、無理のない返済計画でした。
ところが、築10年を迎えたタイミングで、妻の綾子さんが「このままずっとここに住む?」と漏らした一言が、夫婦の人生設計を見直すきっかけになったといいます。
「築10年目から一気に修繕積立金が上がったんです。管理組合からの資料には“将来の大規模修繕に備えて”とありましたが、数年おきにこのペースで上がるのかと思ったら、ちょっと怖くなって」
当初月2万円弱だった管理費と修繕積立金は、現在では合わせて3.5万円。加えて固定資産税や駐車場代など、住宅にかかる“維持コスト”は年々増えていきました。
「共働きの間はいい。でも、65歳以降もこれを払い続けるのは不安でした。何より、マンションって“住み替え”しづらいんですよね。年を取って、駅チカの意味が薄れてきたらどうしようって」
夫婦が検討したのは「売却して、郊外の戸建てに住み替える」ことでした。子どもはすでに独立しており、広さよりも生活の快適さを優先したいと考えるようになったといいます。
「駅からは少し遠くなったけど、土地付きの戸建てで庭もあり、管理費はゼロ。売却益と自己資金を合わせて、住宅ローンも残らなかったので、気持ちがだいぶ軽くなりました」
マンションの売却価格は約7,300万円。築10年のわりに高く売れた理由は「立地がよかったこと」と「大規模修繕前だったこと」だと、不動産業者から説明を受けたといいます。
