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“神童”と言われた自慢の娘
「小さい頃から人より頭の回転が速く、周囲から“神童”と言われていました」
娘についてそう振り返るのは、関東近郊に暮らす80歳の男性・小林正澄さん(仮名)。正澄さん自身は75歳の妻と2人暮らし。年金は月に25万円ほど受け取っています。
正澄さんの娘・冬華さん(仮名・44歳)は私立の中高一貫校の一期生として入学。その後、東京の有名大学に進学しました。大学通りの桜並木を妻と3人で歩いた日の記憶は、今でも鮮明に残っているといいます。
学費こそは正澄さんに出してもらったものの、学生時代は中学受験塾の塾講師のバイトと奨学金で生活費をまかなっていた冬華さん。就職氷河期の最後の世代ではあるものの、卒業後は大手のIT企業に就職しました。専門的な仕事内容は親には分からなかったものの、順調に活躍しているようで、不安はなかったそうです。
コロナ後に変化した娘の暮らし
転機となったのは、コロナ禍以降。娘がパートナーと同居を始め、新しい会社を立ち上げたことでした。
ある日、娘から電話が入りました。
「資金繰りが厳しい。200万円貸してほしい」
正澄さんは迷いながらも援助を決意。借りたお金は分割でもよいから毎月返すことを約束させました。しかし、そのお金は返ってきませんでした。
「お金そのものよりも、約束が守られなかったことがショックでした」
「話を聞いてほしい」の声に、父は…
1カ月後、再び娘から電話がありました。
「もう少しで会社が軌道に乗るから、返済を待ってほしい。ちょっと私の話を聞いてほしい」
しかし正澄さんは、憤りを抑えきれませんでした。
「お前はいい大人の癖に、200万円も手元にないのか。1万円でもいいから返せ。約束を破る娘に育てた覚えはない!」
そう怒鳴り、電話を切ってしまったといいます。
その後、娘からは少しずつ返済が始まりましたが、溝は深まりました。
妻から知らされた「もう一つの事情」
後日、妻から思いがけない事実を聞かされます。
「パートナーが病気になって、お金の返済どころではなかった。今は体調も回復して融資も受けられそう。でも一番ショックだったのは、あなたが話を聞こうとしなかったことだって」
さらに娘は、こうも語っていたといいます。
「勉強が得意で親に褒められるのは嬉しかったけれど、私の話を昔から聞いてもらえなかった。今回のことがあって、その記憶が蘇ってしまった。だから今は距離を取りたい。しばらく実家には帰りたくない」
その後、正澄さんは冬華さんに宛てて手紙を書いたといいます。
これまでどんな思いで娘を育ててきたのか、そして“約束を守ること”がどれほど大切か――。3枚の便箋に、自分の気持ちをびっしりと綴りました。
しかし、その手紙に対して冬華さんから返事が届くことはありませんでした。
すれ違った父と娘の気持ち
正澄さんは今、複雑な思いを抱えています。
「娘は勉強が得意で、将来を考えて教育費も惜しみませんでした。しかし、私も仕事が忙しく、娘の手がかからないことをいいことに娘のことは妻に任せっぱなし。娘の話をじっくり聞いたり、悩みを聞いたりする時間をほとんど持てなかったように思います。結局、“物分かりのいい娘”を支配していただけだったのかもしれません」
“約束を守ること”を何より大切にしてきた父と、“話を聞いてほしい”と願った娘。
二人の価値観は、金銭トラブルをきっかけにぶつかりました。
互いを思う気持ちがすれ違ったとき、人はどう向き合えばいいのか――。正澄さんは今日も、自宅の書斎で娘の写真を見つめながら、自問自答を続けています。
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