“ねたみ税”と呼ばれる理由
アメリカでは、相続税に対する哲学も日本とは異なります。鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、富裕層はその富で社会に貢献すべきであり、相続税は50%でよいと考え、「金持ちのまま死ぬのは不名誉である」と述べました。セオドア・ルーズベルトやフランクリン・ルーズベルトも富の再分配の観点から相続税に賛成していました。
一方、財務長官を務めたアンドリュー・メロンは、相続税が経済に損害を与えるとして税率引き下げを主張しましたが、結局廃止には至らず、美術品や財産を国に寄付する形で対応しました。
1997年から2009年の間にアメリカでは基礎控除が6倍に拡大され、2010年には一時的に相続税がほぼ廃止されました。オバマ政権下で相続税は復活したものの、課税対象は年間わずか4,400人程度。人口3億5,000万人の国で、富裕層は日本よりもはるかに多いにもかかわらず、課税対象は極めて限られています。令和7年時点で、アメリカの相続税は約21億円以上の遺産に課されることになっており、日本と比べて基礎控除額が非常に高いため、大多数の人々が相続税の対象にならないのです。
2025年現在、日本は依然として先進国のなかで相続税の増税路線を取る数少ない国です。「ねたみ税」とも揶揄される相続税の重税は、世界の富裕層が日本に住む意欲をそぐ要因となっています。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾
