世界のなかでも厳しい相続税国家・日本…富の継承を阻む55%の壁【国際税理士が解説】

世界のなかでも厳しい相続税国家・日本…富の継承を阻む55%の壁【国際税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

日本の相続税は、1905年の日露戦争をきっかけに導入されてから1世紀以上の歳月を経て、今や先進国のなかでも突出した高負担制度となっています。アメリカや欧州諸国が相続税を縮小・廃止する流れのなかで、日本だけが逆行する理由とは――その歴史と国際比較から、日本の相続税の実態を探ります。

主要国が次々と“相続税撤廃”へ

では、アメリカはどうでしょうか。第一次世界大戦の際、アメリカ議会は戦費調達のために1916年に相続税を立法化しました。しかし1917年の統計では、課税対象となったのは亡くなった人のわずか1%、相続税収は連邦歳入の1%にすぎませんでした。

 

当時の新聞は、「率直に言ってクラス差別」と記しています。1916年の相続税法では最高税率10%、基礎控除は5万ドル(現在の約1億円)とされており、富裕層だけに課税することへの批判も少なくありませんでした。

 

現在のアメリカ相続税は最高39.96%、基礎控除は545万ドル(約6億円)です。日本の最高税率55%、基礎控除4,800万円と比べると、課税範囲や税負担は大きく異なります。

 

アメリカでは相続税収は国家財政にほとんど寄与せず、1950年から2014年までの連邦収入に占める相続税・贈与税の平均はわずか1.4%に過ぎません。さらに、アメリカでは「Voluntary Tax(任意税)」とも呼ばれ、故人が既に所得税等を納めた後の財産に課税することに合理性が乏しいとされています。

 

また、生前贈与の非課税枠もあり、年間1万4,000ドル(約160万円)、両親がいる場合は2万8,000ドル(約320万円)まで無税で贈与できます。日本のように非上場株や医療法人の承継に高額課税したり、不動産評価に路線価を用いたりする必要はなく、相続税対策の必要性は低いのです。

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