国際租税回避に終止符?2025年版CRSと日本・シンガポールの最新対応【国際税理士が解説】

国際租税回避に終止符?2025年版CRSと日本・シンガポールの最新対応【国際税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

国際的な租税回避や海外資産の申告漏れを防ぐため、OECDが策定した共通報告基準(CRS)が2025年に最新改訂されました。日本やシンガポールでも報告義務や調査の範囲が拡大し、富裕層や金融機関への監視が一層厳格化しています。本記事では、CRSの最新動向と各国の対応を分かりやすく解説します。

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国際租税回避への基本対策

海外の金融機関を利用した国際的な脱税や租税回避に対応するため、OECD(経済協力開発機構)は2014年に「共通報告基準(Common Reporting Standard、CRS)」を策定しました。

 

この制度の下では、金融機関が非居住者に関する口座情報を各国の税務当局に報告し、その情報を各国間で自動的に交換します。

 

CRSが導入される以前は、日本の税務当局が海外に保有される金融資産を把握することは困難であり、納税者本人の自主申告に依存していました。2025年現在では、100以上の国・地域がCRSに参加しており、情報交換の網はほぼ世界全体に広がっています。

 

CRSで報告される基本情報(個人)は以下の通りです。

 

  • 氏名
  • 住所
  • 納税者番号
  • 口座残高
  • 利子・配当の年間受取総額

 

この情報交換により、海外資産の把握が格段に容易になりました。

日本の自主申告制度と課税強化

日本では、納税者の自主申告を促し、国外資産の透明性を高めるために、以下の制度が導入されています。

 

国外財産調書制度:国外に5,000万円以上の資産を保有する居住者が対象。

財産債務調書制度:所得が2,000万円以上かつ総資産が3億円以上の者が対象。

国外転出時課税制度:1億円以上の株式等を保有したまま海外に居住地を移す場  合に課税。

 

これにより、富裕層は海外資産や財産内容を詳細に税務署へ申告する義務を負うことになり、当局による「資産の可視化」は年々強化されています。

シンガポールの対応

シンガポールは2017年にCRS規制を施行し、2018年から情報交換を開始しました。現在では、日本を含む多くの国と金融口座情報を交換しています。報告対象となる情報には以下が含まれます。

 

  • 氏名
  • 住所
  • 居住地国
  • 納税者番号(TIN)
  • 生年月日

 

さらに、法人についても、受動的非金融事業体(Passive NFE)は個人と同様に情報開示の対象となります。Passive NFEとは、収益のうち利子や配当といった受動的所得の割合が高い法人、あるいは受動的資産が全体の50%以上を占める法人を指します。こうした法人の場合、その株主や役員の情報も日本の税務当局へ報告されます。

シンガポールにおける罰則

シンガポールでは、CRSに基づく報告義務に違反したり、虚偽申告を行った場合、最大10万シンガポールドルの罰金、または最長2年の禁固刑が科されます。2018年以降、シンガポールは租税回避や脱税に対して極めて厳しい環境となり、アジアにおける国際的な租税コンプライアンスの中核的存在となっています。

まとめ

CRSの導入と改訂により、海外資産の把握や税務監視は格段に強化されました。日本の富裕層や海外拠点を持つ法人、シンガポールを利用する投資家にとって、資産申告の正確性と透明性はこれまで以上に重要となっています。

 

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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