(※写真はイメージです/PIXTA)

「地方創生」が叫ばれて10年。しかし、この間に日本の総人口は273万人減少し、東京圏には逆に約100万人が集中しました。皮肉なことに、その東京こそが全国で最も出生率の低いエリアの一つでもあります。この10年の政策はなにをもたらしたのでしょうか。本記事では、森山高至氏の著書『ファスト化する日本建築』(扶桑社)より、人口動態のデータから「東京一極集中」と「少子化」の根深い関係を読み解くとともに、都心部で進む公園再開発という、もう一つの課題を指摘します。

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民間活力導入の大義名分のもと、再開発事業で狙われる「公園」

そのような事態を尻目に、現在の首都圏を含む大都市の再開発事業におけるそのプロセスにおいて、問題ありと思わせるのが、公共資産を取りこんでの再開発だ。

 

これはPFI事業との組み合わせとなるケースも多く、要は再開発事業と公共サービスを一体化で進めることで、財務負担も軽減し民間活力の投入も図る、という都合の良いタテツケになっている。PFI事業(プライベート、ファイナンス、イニシアチブの略)とは、公共サービスの提供において、民間に施設整備や運営をゆだねる手法のことをいう。

 

特にここのところ東京都だけでなく、地方都市などで積極的に進めているのが、公園の管理委託を含めた、パークPFIである。

 

「公園」の歴史は、明治の近代化から始まった

公園とはその名のとおり公(おおやけ)の園庭を指す。我が国において、明治の近代化以前には「公園」という言葉は存在しなかった。現在の公園に相当する誰でも受け入れるような、市民の公園的な役割は、社寺の境内地や広小路などがその役目を果たしていたといえるだろう。

 

そのため、明治の初期に設けられた浅草、上野、芝、深川、飛鳥山といった公園はみな、それら境内や神域を元にしたものである。

 

幕末から明治維新にかけて欧州を視察した時の権力者らは、欧米の都市開発における「公園」の存在を重視し、広く国民の憩いや健康増進および都市景観の充実を図る意味で、多くの都市公園をつくっていった。

 

我が国最初の本格的な欧米式の公園は、東京の日比谷公園だが、その後の明治神宮の内苑・外苑、北海道の大沼公園、会津の鶴ヶ城公園、福岡の大濠公園など、日本各地に100を超える大型の都市公園が設営されたのは、明治から大正時代にかけてである。これらの公園を再開発に取りこむ計画が、なぜかこの十数年間、急速に進んでいるのだ。

 

その計画の根拠には、前述のように主に「財政難」「老朽化」「維持管理コスト」などを掲げているのだが、その多くは公園の運営委託にとどまらず隣地や街区の区画整理と連動し、高さ制限の解除や緑地の統合を含み、高層ビルや高層マンションの許認可を図るものとなっている。

 

これらの計画には短期間の計画の告示と一般的な民間再開発事業と同様のプロセスで事業が進められており、民間が一枚噛むことによって、そのすべてが公共事業や公共政策ではないという解釈が成り立ち、民間のプライバシーや設計図書や企画における意匠やアイデアの守秘義務を盾にして、開示請求にも応じない。

 

公共的事業でありながら、その意思決定のプロセスはブラックボックスのままなのである。

 

結果として、多くの市民は、計画の始まりや意思決定のプロセスに関わることはなく、なぜそのような公共資産の利活用が必要なのか、その理由を知ることはなく、その後の利活用に向けての意見も反映されない。

 

公的な土地資産を利用しながら、民間開発の条例の仕組みの中で、拙速に事は運ばれているのである。

 

 

森山 高至

建築エコノミスト/一級建築士

 

 

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※本連載は、森山高至氏の著書『ファスト化する日本建築』(扶桑社)より一部を抜粋・再編集したものです。

ファスト化する日本建築

ファスト化する日本建築

森山 高至

扶桑社

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