(※写真はイメージです/PIXTA)

都心のマンション価格が高騰し続けています。この動きが広がると「バブル」となり、崩壊後には悲惨な事態が待ち受けているかもしれません。そこで今回は、バブルについて考えてみましょう。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

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バブルは2種類→「だれが見ても明らか」「知らぬ間に拡大」

バブルには2種類あります。ひとつは「だれが見てもバブルだとわかる」ものです。有名なのはオランダのチューリップバブルで、チューリップの球根1個が現在の貨幣価値で数千万円に高騰したそうです。

 

あとから考えれば「強欲で無能な投機家が損をしただけ」と思われますが、実際には損をしたのは最後にババを掴んだ人だけで、多くの投機家は儲けたわけです。バブルだとわかっていて投機すること自体は、ある意味合理的な場合もあるのです。なんといっても天才ニュートンが投機に参加したわけですから、愚か者だけが投機しているわけではないのです。ニュートンはたまたま運悪く損をしたようですが(笑)。

 

もっとも、現在ではそうしたバブルはまれです。政府日銀が早期にバブルを潰すからです。例外があるとすれば、ビットコインや金などは古いタイプのバブルなのかもしれません。国際的な取引は規制がむずかしいですから。

 

最近のバブルは「バブルか否かわからない間に拡大する」というものです。平成バブルは、いまから思えば明らかにバブルでしたが、当時はバブルか否か論争がありました。そして、日本経済を動かしているような賢い人々のなかにも住宅ローンを借りて自宅を購入した人が少なくなかったのです。だれもがバブルだと知っていれば、自宅を購入する人はいないはずです。バブル崩壊を待ってから安値で買えばよいわけですから。

 

そうしたときに政府日銀がバブルを潰そうとするのは大変です。儲かっている人から「バブルだという証拠を示さない限り認めない」と大ブーイングが来るからです。平成バブルのときも、「サラリーマンが家を買えないで困っているから不動産価格を下げる」という理由で不動産価格抑制策が採用されたのでした。

銀行が賢ければバブルは潰せる

政府日銀がバブルを潰すのはむずかしくても、銀行がしっかり行動すれば、バブルはそれほど拡大しないはずです。不動産購入資金を借りたいという客が来たとき、銀行内でしっかり議論すればよいのです。

 

行員A「いまがバブルか否か、わからない…」

行員B「いまがバブルでないとしよう。貸出をすれば、金利が儲かるだろう」

行員C「いまがバブルだとしよう。貸出すれば元本を損するだろう」

行員A「それなら、いまがバブルでないとはっきりするまで、貸出はやめておこう!」

 

というわけです。

 

バブル期の不動産投機の多くは銀行借入によるものだったので、銀行が貸し出しに応じなければ、あそこまでバブルが拡大することはなかったでしょう。しかし、平成バブル期の銀行は、銀行間の貸出競争に熱心で、冷静な議論をせずに貸出をしてしまっていたようです。

 

今回のタワマン高騰がなぜ起きているのか、明確ではありません。外国人富裕層が投機で買っている、日本人の高額所得者が住むために買っている、という面もあるのでしょうが、日本人投機家が銀行借入で買っている面も大きい、ということなのであれば、少なくとも銀行が投機家への融資に慎重になるだけで価格高騰は穏やかになり、投機家が持っている物件が売りに出るようになるかもしれませんね。

バブル判定の4条件

現状がバブルなのか否かわからないときに、筆者は自分なりの判断基準として4つの条件を考えることにしています。以下、ご紹介します。

 

1. 今回は従来とは事情が違う、という人が出てくる

平成バブルのときには、「バブルだ」という人に対し、「日本経済は米国経済に勝った。日本の時代がやってきたのだから、株価や地価が高いのは当然だ」という人がいました。

 

今回も「外国人から見れば日本のタワマンは割安だ」「夫婦とも正社員で高所得というカップルが昔よりはるかに多い。そうした人々であれば、現在の低い金利で住宅ローンを借りて億ションを買うことは無理ではない」といった人もいますが、いかがでしょうか。

 

2. 資産価格が高騰しているのに金融が緩和されている

資産価格が高騰するときは、総じて景気がよいのでインフレが懸念され、日銀が金融引き締めをすることが多いのです。そうなると、借金して土地を買うことがむずかしくなるので、バブルは自然に潰れてしまいます。

 

しかし、まれに資産価格が高騰しても金利が上昇しないことがあります。平成バブルのときには、プラザ合意後の円高によって輸入価格が下落していたので、景気が絶好調でも金利が上がりませんでした。だからバブルがあそこまで拡大できたのです。

 

今回は経済全体が盛り上がっているわけではなく、金利も低いままですから、もしも今次高騰がバブルなのであれば、バブルが大きく育つ素地はありますね。

 

3. いままで興味を示さなかった素人が大勢参戦する

読者の配偶者が、隣人が儲けた話を聞いて「株って簡単に儲かるらしいから、自分もやってみよう」などといいだしたら、読者は持っている株を売りましょう(笑)。

 

今回は、対象がタワマンなので、素人が大勢参戦することはなさそうです。今回の判断には、条件3は利用できそうにありません。

 

株価も上昇していますが、PERやPBRからみて、到底バブルといえるような水準ではないので、そちらは当面気にしなくてよさそうです。

 

4. 当事者だけ盛り上がっていて、周囲は醒めている

平成バブルのころは、国内は盛り上がっていましたが、海外では醒めた見方をしていたようです。今回は、だれが盛り上がっていてだれが醒めているのか、筆者にはよくわからないので、判断材料にはしないでおきましょう。

経済全体へのダメージは小さい、部外者は「高みの見物」でOK

以上を考えると、現在がバブルか否かはよくわかりませんが、バブルであるとすれば今後も拡大する可能性はあるでしょう。

 

もっとも、仮にバブルが崩壊したとしても、バブルがタワマンだけに発生しているのだとすれば、経済全体に与えるダメージは平成バブルとは比較にならないほど小さいでしょうから、部外者は高みの見物をしていればよいと思いますよ。

 

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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