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商品の売れ行きのよしあしは「前年比」で見るとよくわかる
12月のケーキの売れ行きが好調だったかどうかを知りたいとき、11月の売上高と比較しても意味がありません。売上が増えていても、好調だったのか、単にクリスマスの影響で増えただけだったのか、判断に困るからです。
そんなときに便利なのが、前年の同月と比較する方法です。それなら、前年12月にもクリスマスはあったので、前年より売上が増えていれば好調だったのだろうと判断できるからです。
そこで、ケーキに限らず、さまざまな統計数字を前年同月比で見ることは広く行われています。たしかに便利ではありますが、前年比の数字を見る際には注意すべき点も少なくありません。
前年比を見るときは「前年の特殊要因」にも注意して
前年8月に五輪があり、テレビの売上が好調だったとします。今年の8月のテレビ売上の前年比は、マイナスになっている可能性が高いでしょう。それを見て社長が「サボっていただろう!」と販売員を叱るのは問題ですが、前年8月に「五輪」という特殊要因があったのを忘れていれば、起こり得ることです。
もっともその場合は、叱られた販売員が「2年前、3年前の8月と比較してマイナスになっていないので、サボっていたわけではありません」と弁明できるでしょう。
ちなみに、2年前と比較する場合、直近のデータを2年前のデータで割る必要はありません。今年8月の前年比と昨年8月の前年比の数字を足せばいいのです。
前年比だけに注目していると「変化に気づきにくい」ワケ
物価が毎月上昇を続けていたのが、下落に転じた場合、統計の前年比を見ていると、しばらくは下落に転じたことに気づきません。政策担当者が気づくのが遅れると「インフレだから景気をわざと悪くして物価上昇を抑え込もう」という政策が、物価が下落に転じてからもしばらく続き、景気が必要以上に悪化してしまうかもしれません。
株式投資家が変化に気づくのが遅れれば、ほかの投資家に情報面で遅れを取り、損をしてしまうかもしれません。
石油ショックが発生して消費者物価指数が100から120に上がったとします。物価の前年比は2割上昇です。物価統計は、しばらくの間「前年比プラス2割」と発表され続けるでしょう。しかし、1年経過すると、前年同月の物価指数も120となるので、前年比の物価上昇率はゼロになります。そのとき「石油ショックから1年経過して、ようやく物価が安定してきた」などと考えてはいけません。物価は石油ショックの翌月から120で安定(高値安定)していたのですから。
消費者物価指数の場合には、クリスマスのような撹乱要因は小さいので、消費者物価指数をそのままグラフにして眺めている人も多いでしょう。そういう人の方が、物価の安定に早く気づいたはずです。
そうであれば、次からは消費者物価指数そのものをグラフに描いて眺めるようにすればいいでしょう。でも、ケーキの場合はどうすればいいのでしょうか? それは「季節調整値」をグラフにすればいいのです。
「季節調整値」のグラフを見よう…具体的な作成方法を紹介
前年同期比の上記のような問題点を補うためには、「季節調整値」のグラフを眺めるといいでしょう。プロは複雑な計算をして季節調整値を求めているようですが、簡便法を使えばパソコンでも簡単に計算できます。
①10年分のケーキの売上を合計して120で割り、1カ月あたりの平均売上高を求める。
②10年分の12月の売上高のデータを合計して10で割り、12月の平均的な売上高を求める。
③数値が出たら、②を①で割る。
④その結果、たとえば「12月は普段の〈3倍〉売れる」とか「12月は普段の〈4倍〉売れる」といったことがわかるので、12月の売上高を〈3〉とか〈4〉で割ってグラフに描き込む。
12月以外のデータについても同様の計算をしてみると、意外な発見があるかもしれませんよ。
政府発表の統計には、季節調整値が載っている場合も多いですが、自社の売上などでも簡便法を使えば簡単に計算できるので、試みてみるといいでしょう。クリスマスのケーキやバレンタインのチョコレート、夏場のアイスクリームのように明らかに季節性があるものは当然として、それ以外のものについても「12月はボーナスが出るので、多くのものがよく売れる」といったことがあるかもしれませんから。
なお、季節調整値は「前月比〇%増」といった表現がなされることも多いですが、増減を繰り返している場合、なにが起きているのかわかりにくいですから、季節調整値をグラフに描いてじっくり眺めるのがいいと思います。
今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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