レジペーパーがつながらない
繁華街でおでんの名店を見つけ出し、潜入調査を実施してから無予告で踏み込んだ。この店にはレジがあり、潜入調査でもレジを打っていることを確認している。
店に保管されていた2ヵ月分の注文伝票とレジペーパー(控え)を借り受け、税務署に戻ってからチェックすると、注文伝票とレジは合致している。しかし、1回目の潜入調査は売上に計上されているものの、2回目が見当たらない。考えられるのは、営業後に注文伝票を破棄してレジを打ち直す手口だ。
注文伝票には連番が付されていないため、一部を破棄しても税務署には分からない。そうすると、一見客だった1回目の潜入調査は警戒して細工をしなかったのだろうか。着手前の分析では、店の利益率は同業者と乖離しておらず、売上除外の確かな証拠が見つからなければ早期撤収を考えなければならない。
筆者 「レジペーパーの金額だけではダメだよ。注文伝票も良く見てごらん。支払額が同額でも別人の飲食代金かもしれない」
調査官「確認しました。注文内容が潜入記録と同じですから、1回目は間違いなく売上に計上されています」
筆者 「2回目の注文伝票は捨てたのかね。どちらもレジを打っていたはずだから、手口はレジの打ち直しか?」
レジペーパーは毎日切り取って、注文伝票と一緒に輪ゴムで留め、現金仕入の領収書と合わせて営業日ごとに封筒に入れて保管していた。しかし、レジペーパーは日付順につながってロールになっている。切り離すと散逸の原因になるため違和感があった。
筆者 「なんでそんな保管状態なの?」
調査官「青色申告会から指導を受けたといっています」
筆者 「おかしいね。聞き間違えたのかもしれないが、ふつうロールは切り離さない」
この点について店主は、「日ごとになっていると、注文伝票と突き合わせるときにチェックしやすく、仕入の領収書も一緒に封筒に入れてあるので、記帳するときにも便利。保管方法は青色申告会で教わりました」と説明していた。
筆者 「なるほど。切り取る理屈はつけているようだね」
調査官「説明に無理はありませんでした」
筆者 「試しにレジペーパーを日付順に並べてみな。本当に保管するだけが目的なら前後がつながるはずだ」
