単身高齢者「毎月赤字」の暮らしぶり
少子高齢化が進む日本では、ひとり暮らしの高齢者が年々増え続けています。2020年の国勢調査によれば、65歳以上の一人暮らし世帯は約600万世帯にのぼり、その数は今後さらに増加する見込みです。
結婚や家族のかたちが多様化するなか、「ひとりで生きていく」という選択も当たり前になってきました。ただし、その先にある“老後の暮らし”となると、話は別。とくに収支面の不安は、年齢を重ねるごとに現実味を帯びてきます。いずれ配偶者を失う可能性のある夫婦にとっても、「おひとりさま老後」は無関係ではありません。
総務省統計局『家計調査年報(令和6年)』によると、65歳以上の単身無職世帯(いわゆる“高齢単身世帯”)の1ヵ月あたりの実収入は13万4,116円。うち、約9割(90.7%)は社会保障給付、つまり主に年金です。
一方で、支出総額は14万9,286円。差し引きすると、月々「2万7,817円」の赤字になります。
【65歳以上の単身無職世帯/実収入内訳】
事業・内職収入……575円
社会保障給付…… 11万1,629円
仕送り金……1,040円
【65歳以上の単身無職世帯/支出内訳】
食料……4万2,085円
住居……1万2,693円
光熱・水道……1万4,490円
家具・家事用品……6,596円
被服及び履物……3,385円
保険医療……8,640円
交通・通信……1万4,935円
教養娯楽……1万5,492円
その他消費支出……3万956円
直接税……6,585円
社会保険料……6,001円
わずかな貯蓄を切り崩しながら生活する人も少なくなく、それすらも底をつけば、生活の継続が危ぶまれます。
都市部では「賃貸の壁」にも直面
高齢単身者にとっては、「住む場所」の確保も大きな課題です。
とくに都市部では家賃が高騰しており、年金収入だけで暮らすには大きな負担となります。加えて、賃貸住宅の契約においては、高齢であることや低収入を理由に断られるケースもあります。保証人が必要となる場面も多く、家を借りるという行為自体が大きなハードルになりつつあります。
東京都内でひとり暮らしをする田中さん(仮名・78歳)は、月14万円の年金を頼りに生活しています。
住んでいるのは、家賃7万円のワンルームマンション。光熱費や食費、医療費を合わせると毎月の支出は15万円を超え、常に赤字です。少しずつ貯金を取り崩しているものの、残りはわずか。「これからどうやって暮らしていけばいいのか、不安しかありません」と語ります。
インフレの影響で食料品や光熱費、通信費が上がり続ける一方で、年金額は大きく増えません。結果として、収入と支出のバランスが取れない状態が長期化しています。
