一目惚れで購入した、憧れの「湾岸タワマン」
「モデルルームを見た瞬間、“ここに住みたい”と思ったんです」
そう語るのは、都内のIT企業に勤める会社員・佐藤涼さん(仮名・42歳)。妻の真理さん(39歳・仮名)と共働きで、世帯年収はおよそ1,700万円。
結婚10年目を迎える頃、「そろそろ資産になる家を持とう」と思い立ち、たまたま広告で目にした湾岸エリアの新築タワーマンションのモデルルームを訪れたといいます。
「夜景がすごかったんですよ。天井も高くて、ジムもキッズルームもあって、非の打ち所がなかったです」
その場で申し込みを決め、ローンを組んで購入。周囲からは「よくそんな高いの買ったね」「タワマンって管理費も高いんじゃない?」と驚かれたものの、二人に迷いはありませんでした。
入居して半年ほど経ったある日、マンションの掲示板に「今週末、住民説明会があります」との張り紙が出ました。内容は、「共用施設の使用ルールの見直しについて」。
説明会では、共用施設の利用ルールやごみ出しの時間帯に関する意見が交わされ、「宅配ボックスの使い方」や「キッズルームでの過ごし方」など、細かい生活マナーに関する質問や要望が多数挙がったといいます。
湾岸のタワーマンションは、同じ建物内に何百もの世帯が暮らす“集合住宅の極み”です。高所得の共働き世帯、子育て中のファミリー、投資目的で購入した単身者など、居住者の層も多様で、生活時間帯や価値観の違いがトラブルのきっかけになることもあります。
その後佐藤さん夫妻が戸惑ったのは、「ラウンジの使い方をめぐるトラブル」でした。休日に夫婦で友人を招いた際、音楽を流していたところ、後日管理会社を通じて「騒音が不快だった」というクレームが入ったのです。
「管理人さんにも“かなり神経質な方がいるので……”と言われて。ルール上は問題ないはずなのに、どこまで気を遣えばいいのか分からなくなりました」
その後も、宅配ボックスの利用時間やキッズスペースでの保護者の付き添いに関して、細かいルール変更が続きました。